食品スーパー「サミット」調査結果【無料資料ダウンロード】
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング(ARC)は、ミステリーショッピングのプロ集団であり、店頭のリアルな商品や売場の実態と、それが顧客の感情、再来店の意向に与える印象などを調査・分析するスペシャリストです。
コロナ禍のこんな時代だからこそ、店の側のちょっとした気遣い、店頭での配慮、店頭のプロモーションなどでお客さまの“琴線に触れる=ちょっとした感動を与える”ことにつながる実際を、私たちが店を訪れ調査、解説する「イイネ!好感度チェック」は『サミット』です。
“生鮮の強い…”からガラリと変わった「即食居酒屋」イメージ
ご承知の通り、サミットは東京、神奈川、埼玉、千葉に119店を展開するスーパーマーケット(SM)企業です。その特徴は的確なLSP(レイバー・スケジューリング・プログラム)に裏打ちされたオペレーション力であり、その生鮮食品を中心にした鮮度や売場管理の技術の確かさでしょう。
今回のストアコンパリゾン(店舗視察)でも、こうした点は明確に表れていて、調査員の言葉にも「どの店舗でも野菜がすべて、畑に生育している状態、形状と同じ方向に陳列されていて、オペレーションの徹底度は圧巻」「鮮魚では、『おさかなキッチンコーナー』が設置されていて、専用ブースでスタッフが調理加工や呼び込みを行っていて、工夫があった。鮮度もよく、スタッフも親切ということで、購入されるお客様が多くいた」など、“サミットらしさ”を見ることができました。
一方、多くの調査員を驚かせたのが、現在のサミットの惣菜商品、即食商品の充実ぶりでした。“生鮮が強い・・・”という形容詞の印象とは少し異なったイメージだったようです。
「とにかく、お惣菜が充実、少量小分けから大容量までたくさん揃っている。特に昨今の個食に対応し、小分けの総菜が充実、1パック50、60円の値段の物から品揃えしていた」「カット野菜が充実していた(「蒸し野菜 ミックスサラダ」「蒸し野菜 3種のサラダ」「パプリカ彩るレタスのサラダ」…などなど記載は18アイテムにのぼっています)」などでした。
特に精肉、鮮魚売場に隣接し生鮮で扱う“生の原材料”を使ったグリルキッチンコーナーなどは「個食の惣菜が、低単価でおいしそうに並べられ“まるで居酒屋でつまみを1品ずつ注文するイメージ”で買うことができてワクワクした」という売場になっていました。コロナ禍で外食が難しい時期の、時宜にかなった売場のひとつでしょう。
サミットでは、現在、“大総菜プロジェクト”に取り組んでいます。これは惣菜、生鮮などの部門を超えて即食商品に全社を挙げて取り組もうというもので、具体的には部門横断で原料の仕入れを共通化したり、店内加工の際の加工を補助しあったりするといった取り組みです。取り組んだ店の惣菜・即食の構成比は25%以上を目指すという高い目標ですから、改めて今のサミットを見た調査員が、“惣菜が強い…”という、これまでとは違った印象を受けたのもよく分かります。
この即食強化は「入口を入ってすぐのエリアには、カットフルーツが陳列されていて、気分を上げる工夫がなされていた」という購買心理にもつながっているようです(このワクワク感をチェーンストアの言葉で“エキサイトメント”といいます)。
“お堅い”店ではなく、「弁当は写真を撮って子供に聞いてみよう」
それ以外にも、現在のサミットにはこれまでの“きっちりした”、ややもすると“お堅い”のサミットの印象(筆者の思い込み?)とは違ったものがたくさんありました。
店内では「菓子のコーナーで駄菓子などが屋台風の什器に陳列されて、上にはうまい棒のエアクッションや動物やキャラクターなどの風船が設置されており、お祭りのような雰囲気だった。子供の取りやすい陳列も親切」ですし「定番売場では同店のオープンセレモニーを振り返ったり、スタッフメッセージもかわいらしく工夫された秋らしい装飾もあったりして、地域に愛されている、地元志向が感じられた」など、楽しそうな取り組みも多くみられました。栗などの装飾には“リスはなんびきいるかな?”など子供を楽しませるフレーズのショーカードもありました。
弁当の売場では「サミットでは、写真撮影OKなのが驚き。『迷ったら、撮って聞いてみよう』の黄色POPが売場展開されている!!」とあり、お母さんがどの弁当を選ぶかを迷ったら、SNSで写真を送って子供に選んでもらう、というもの。考えてみれば、まさしく“今風”です。
手描きPOPなども多用したこうした売場は、とても柔らかい印象だったようです。
サミットは『サミットが日本のスーパーマーケットを楽しくする』の企業CMも作成、売場を楽しくしようとしています。そんな取り組みが、こうしたところに見えていたようです。
楽しさだけではなく、“お手頃さ”も大きく打ち出しているのが、今のサミットです。
「店内入口付近にはお買い得品を目立つ陳列していた」「おすすめの飲料:「ボーナスポイント」9月+10ポイント/冷凍食品:冷凍食品「毎日」お安くご提供中です!!/菓子:毎日 とく値!/加工食品:厳選 1か月連続「超特価」(ラ王298円!など)」で月間特売やEDLP、ポイントアップの低価格を強調しています。その一方で「レトルトカレーが70円(税抜き)などエンドのワゴンにお買い得商品があった」などピンポイントの安さも訴求、店全体にお買い得感を徹底しています。
調査は9月で天候不順で野菜の相場が高騰していることから「『生鮮野菜が高値となっております・冷凍野菜を是非ご利用下さいませ』『総菜(煮物、サラダ)を是非ご利用くださいませ』などの表示」があり、わが店の“お買得”惣菜の試し買いなども訴求していました。
品揃えでも柔軟対応「学習帳をお取り寄せいたします」
価格訴求以外にも、いろいろな“便利”“親切さ”もお客様に訴えています。
「鮮魚コーナーに『塩さけ』のおすすめの食べ方についての掲示があった→甘口(ムニエル・バター焼き)/中辛(おにぎり・お弁当)/辛口(お茶漬け)/極辛(温かいご飯)という内容でわかりやすいと感じた」は、いまひとつ辛さが分からない商品選択に役立ちそうです。
「『子育て世代のみなさまへ 優しいものをお届けします』という形で、アレルゲンフリーの専用売場を設置していた」り「文房具コーナーには『学習帳他ご要望商品お取り寄せいたします』というPOPがあった」りして、子供を育て、学校に通わせる世帯の“不”“負”にも応えようとしています。
「『お客様の声で品揃えしました』のコーナーが設置されていて、声を聞いてくれるんだという訴求」をしたりしていました。こうして定番ゴンドラ以外にコーナー化することで、「売れるか売れないか分からない商品で定番売場を壊さない工夫がされていた」のも特徴的です。
レジ前の床では「レジの並び方の足もとシールには『こちらでお待ちください』という表記があり、レジに1番近いシールには『こちらでお待ちください』の他に『サミットポイントカード』『サミットアプリ』の画像と共に『レジにてご提示ください』といいう案内が記載されていた」など、お客様がレジでどぎまぎしたりしないようにする“ひと言”も添えられています。
レジ外では「年配の方用に買物カート置き場が設置されていた」は、自宅から持ってきた買物カートがショッピングの際に邪魔にならないように、カートを安心して置いておくことのできる鍵付きスペースのこと。実際の買物シーンを想像して設備面でも対応しているのがよく分かります。
「どの店舗も、掲示物が整理されていて期限切れや破れなどの欠損が全くない」というコメント通り、売場マネジメントレベルの“強み”を、従業員の躾(しつけ)レベルで実現してきたサミット。今は、この強みを生かしながら、売場を面白く、楽しくすることで、“イイネ!”を創造する顧客創造=マーケティングのレベルで強化しているのが分かる現状の店頭です。
管理も大事ですが、“楽しい”も大事、それが分かるサミットのストアコンパリゾンでした。
詳細な調査結果は「優秀チェーン7つのエクセレント」を下記よりダウンロードして頂けます。
ぜひダウンロードしてご覧くださいませ。
著者プロフィール
三浦美浩
1987年 東北大学卒業、損害保会社を経て商業界入社、「食品商業」編集長、「販売革新」編集長
2011年8月 商業界取締役就任
2017年1月 独立しロジカル・サポート㈱設立
2020年4月 エイジスリテイルサポート研究所所長に就任(兼任)、現在にいたる
長年にわたり小売業の現場に関わり、執筆活動と共に、分析や提言も行っている。
従業員教育にも関わりがあり、現場に即した研修には定評がある。
実査、報告書
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング㈱ 調査員