「サイゼリヤ」調査結果 【無料資料ダウンロード】
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング(ARC)は、ミステリーショッピングのプロ集団であり、店頭のリアルな実態と、それが顧客の感情、再来店の意向に与える印象などを調査・分析するスペシャリスト集団です。ARCのスタッフ、調査員が好調企業の“店頭の実態=FACT”を調査し、それが顧客の「また来たい」という印象(これを私たちは『再来店動機』と呼んでいます)に与える要因をお伝えするのがこの連載です。
今回の21回目の連載は、外食業であるサイゼリヤについてレポートします。サイゼリヤは言わずと知れたイタリアンレストランのチェーンストアで国内には北海道から九州まで1038店舗、海外には中国、台湾、香港、シンガポールなどに531店舗を展開する巨大チェーンです。1年間の来店客数は国内で年間1億7810万人、海外では8918万人という大人気の企業で、2010年以降は国内客数は(コロナ禍の期間を除けば)日本の人口を超え続けていて、老若男女全ての人がサイゼリヤを訪れている計算になります(数値は「2024年8月期決算資料」より)。
世界に誇る、立派なチェーンストアと言えるでしょう。
今回も外食業の重要な3つのポイント“QSC(キューエスシー)=クオリティ、サービス、クレンリネス”の視点で評価をしていこうと思います。
低価格、セットメニューなしで “好きなものを、好きなだけ”
何と言ってもその魅力は価格で『驚きの価格!ずっと変わらない味と価格設定!学生時代からサイゼリヤに通っているが20年以上ほとんど変わらない価格設定や味。価格は末尾に端数が出ないように税込み100円や50円単位でほとんど統一されている』『チェーン店の強みをいかんなく発揮。全国どこの店舗に行っても同じメニューを同じ価格や味で食べられ提供時間も早く安定、安心感がある』こと(『』内はダウンロード資料の調査員のコメントより、以下同)。
初めて訪れた調査スタッフもいましたが『考えられない低価格でメニューを開いたときにびっくりして何度か確認をした。ワインが120mlで税込100円とソフトドリンクよりも安い価格で驚いた』とか『ほうれん草のソテーなど野菜の小皿は税込200円、定番のミラノ風ドリアも300円のため、初めてでも試しやすく、次に来た時には何を食べようと考える楽しさもあった』の声もありました。
全ての物価が高騰するこの時代に『ランチメニューは税込500円。メインとサラダとスープ付き。スープはオリーブオイルと黒コショウをトッピングすると更に美味しい!牛丼も他のファミレスでも今の時代ワンコインで食べられるお店はないので本当に貴重』です。
同時に『全体的に、安いからと言ってボリュームや品質が悪いこともなく、クオリティの高い味だった』とのコメントもありました。『たまねぎのズッパは300円と低価格ながらかなりのボリュームで、これとミニフィセルなどを頼んだらお腹いっぱいになるほどのボリューム。焦げ目のついたチーズの味が濃厚で、玉ねぎの甘さとチーズの塩気が美味しい一品』と感じました。
サイゼリヤのメニューの特徴は『単品の注文のみで、セットメニューは見られなかったが、好きなメニュー、好きな量を好きなように組み合わせられるのが嬉しく感じた』こと。個々の料理が低価格で何点かを好きなように選べることで『私は2品に、家族はそれぞれ4品ほど注文し、それぞれの好みの量が注文できた』とありました。まさしくチェーンストアらしい“トータルコーディネート”の発想です。
また今では『一時期“サイゼリヤ1000円ガチャ”というのが流行ったが、これはサイゼリヤのいろいろなメニューを組み合わせて、1000円ぴったりになるメニューをガチャのように表示するというもの。試しにやってみると、タラコソースシシリー風、ミニフィセル、トッピング半熟卵にテイクアウトでたっぷりコーンのピザも頼める。1000円でこれだけ楽しめるのもサイゼリヤの魅力だろう』。低価格でも“チープ=安っぽい”感じがなく、メニューを思いっきり楽しむ喫食シーンがあるようです。
サイゼリヤは外食業の“産業化”を企業理念にしています。産業化とは簡単にいえば、“顧客、従業員、取引先、関係者全てからきちんと必須の正しい存在として認められること”意味しますが、そんな企業だからこと、さまざまな商品を自社で商品開発、直輸入などを行っています。
その取り組みから『メニュー内でも食材やこだわりポイントが書いてある。“オリーブオイルには、「エクストラ・バージン」の名を関することができるのは酸度0.8%以下のものだけです。100%イタリア産のオリーブで作るサイゼリヤのオリーブオイルはさらに酸度の低い0.25~0.35%。料理のベースに一貫して使っているので、どの料理を組み合わせても統一感を持っておいしくお召し上がりいただけます”とオリーブオイルが非常に高品質であることを強調するうたい文句と、持ち帰り用のオリーブオイル(500ml/税込1200円)の記載があった』。自社開発商品にきちんと自信を持ち、販売していることも表示されていました。
『他のファミレスでも同じように説明があることはあるが、サイゼリヤは特に美味しそうと思わせる、うまい文章だと思った』という評価もありました。
価格は安いので雰囲気の良い “イタリアの豊かさ”提供
サービスの面でも『感じが良いスタッフが多い。常に忙しそうで動きはキビキビ!』『入店の案内、配膳や中間下げ、バッシングは人、スマホのオーダー取りや、会計のセルフレジでDX(デジタル対応)。程良いバランスだった』という声もありました。
オーダーは現在はスマホを使うものやと紙に書く方式があり『オーダーは一つ一つのメニューには盛り付けた写真と、注文番号、商品名、価格、人気のタグ、テイクアウト可能かが表記されており、分かりやすい。特に、注文はメニュー番号を紙に書いて記入するため、4桁のメニュー番号は価格より少し小さいがはっきりした文字が、緑の枠で統一されおり、視認しやすい。デザートには「すぐに」「あとで」とそれぞれのメニュー番号が振ってあるため、食べたいタイミングを番号で表せるのは良い工夫だと感じた』など、だれでも分かりやすい工夫がありました。
『卓上の呼び出しボタンは結構な音量で「ピンポーン」と鳴る。2回目に鳴らすとカチカチ点滅でスタッフに対して催促する仕組み。鳴らないチェーンもあるが、サイゼリヤはちゃんと伝わっているかなと心配になる事はない。腰にピンポーン消すボタンをつけていた』と技術を活用した設備も多々あります。
『料理提供時「こちらは〇〇です」ミラノ風ドリアは「お熱くなっているのでお気をつけ下さい」と必ず言ってくれる』などチェーンストアらしく、接客のフレーズもきちんとルール化されています。
クレンリネスも徹底されており『席周り、ドリンクバー、調味料コーナーを見たが、どこも整理されており、汚れなども見当たらなかった。この日見たグラスは汚れもなく清潔だと感じた』『トイレは丁寧に清掃されており、ゴミ箱は溢れておらず、また全く臭いがなかったため、不潔に感じることはなかった』でした。
常にさまざまな面で改善を続けているのもこの企業の特徴で『サイゼリヤは樹脂製のグラスで飲み口が悪いという不満を以前から感じていたが、飲み口も改良され満足できるものだった』などの感想もありました。
『店内は温もりのあるオレンジで統一されており、壁と天井のいたるところに絵画が飾られていることで贅沢な雰囲気をかんじることができた』『店内のいたるところに飾られている絵画が印象的。まるで美術館の中で食事をしているような非日常を味わえる。観葉植物もあったりリラックスできる空間を演出していた』ということでした。
サイゼリヤが目指すのはイタリア式の豊かで楽しい食生活を、多くの人たちに提供することです。品質も、価格も、そして雰囲気も“豊かさ”を感じさせる場、多くの人が何度も足を運び客数が増え続ける素晴らしいQSCがここにはあるようです。
詳細な調査結果は「優秀チェーン7つのエクセレント」を下記よりダウンロードして頂けます。
ぜひダウンロードしてご覧くださいませ。
著者プロフィール
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング編集部
1987年 東北大学卒業、損害保会社を経て商業界入社、「食品商業」編集長、「販売革新」編集長
2011年8月 商業界取締役就任
2017年1月 独立しロジカル・サポート㈱設立
2020年4月 エイジスリテイルサポート研究所所長に就任(兼任)、現在にいたる
長年にわたり小売業の現場に関わり、執筆活動と共に、分析や提言も行っている。
従業員教育にも関わりがあり、現場に即した研修には定評がある。
実査、報告書
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング㈱ 調査員