「ロイヤルホスト」調査結果 【無料資料ダウンロード】
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング(ARC)は、ミステリーショッピングのプロ集団であり、店頭のリアルな実態と、それが顧客の感情、再来店の意向に与える印象などを調査・分析するスペシャリスト集団です。ARCのスタッフ、調査員が好調企業の“店頭の実態=FACT”を調査し、それが顧客の「また来たい」という印象(これを私たちは『再来店動機』と呼んでいます)に与える要因をお伝えするのがこの連載です。
これまで19回は小売業の店頭をリサーチしてきましたが、今回の第20回目は初めて外食、フードサービスについて実際に食してその“イイね!”を調べてみました。今回はロイヤルフードサービス(ホールディングはロイヤルホールディング)が運営するファミリーレストラン業態「ロイヤルホスト」(6月末で国内223店舗)について実際に訪問して、食事をしてみました(調査は2024年9~10月、価格やメニュー名などは当時のもの)。
ロイヤルホストは1959年、本格的なファミリーレストランとして福岡に誕生したこのフォーマットの草分け的な存在で、店舗名は“ロイヤル=王者の輝き”と“ホスト=ホスピタリティ”を掛け合わせたもの。多くが店内調理を極小化して店舗運営を簡素化する傾向が強いフードサービスの中で、ロイヤルホストは『料理人がきちんと手間をかけて美味しい料理を提供すること』(同社ウェブサイトより)という通り、店内調理を大切にしていることも特徴です。
そんなロイヤルホストを、フードサービスが大切にする3原則である“QSC(キューエスシー)”(QUALITY=料理の品質、SERVICE=サービスレベル、CLEANLINESS=清潔感)の3つの視点で確認してみました。
ケールを使ったサラダ、オニグラ 手切りで店内焼成のステーキ
当日、ARCのスタッフが実際に食してみたメニューに「150gアンガスサーロインステーキサラダ」2,680円(税込2,948円)」がありました。感想は『ステーキは十分な量でやわらかく美味しかった。メニュー画像よりは少しお肉が小さめに感じたが、お肉の下にはマッシュポテトがあり、ライスやパンがなくてもとても満足感のある一品。サラダにはカリーノケールという品種を使っており、ケールの中でも苦みや青臭さが無く、ケールの特徴である葉のトゲトゲがなくフリル状で、立体的で食べ応えがあるのが特徴。』と大満足の様子でした(以下、『』内はスタッフのコメント)。
ステーキと一緒にたべたサラダも『ロイヤルホストのサラダは、ただ野菜を多くヘルシー志向にしているだけでなく、ちゃんと食べ応えがあり満足できるように考えられているのが魅力と感じる。そして、葉物部分はレタスやベビーリーフではなく、栄養価の高いケールなのがとてもうれしい!!他にもステーキメニューを試したが、添えてあるサラダはすべてケールだった。青汁でお馴染みのケールを生のサラダで食べるのは、ここ数年で流行ってきたと感じていたが、調べたところ、ロイヤルホストでは2018年には販売が始まっていた』ということで、まさに“先駆け”の様子がよく分かるメニューでした。
ハンバーグを食べたスタッフも『ハンバーグはお肉の味が強かったが、臭みは全くなく美味しかった。目玉焼きが乗っていたが、半熟での提供だったので味変になった』と楽しく食したようです。
『お店に入ってすぐのところに産地表があり、国産の安心感があった』とある通り、野菜などは多くが国内産を使用。ステーキの牛肉はアメリカで循環型農業を営む農場の“ブラックアンガス種”を使っており、それを店舗にチルドで納品し手切りをするというこだわりです。
セットメニューでは『スープをオニオンスープに変えることができ、玉葱を長時間炒めた、懐かしい味のスープで美味しかった』とある通り、人気の超定番メニューの“オニオングラタンスープ”も人気で『安定のおいしさだった』と表現するスタッフもいました(ちなみに私も実食しました)。
提供も『熱いものは熱く、冷たいものは冷たく提供され、味もとてもおいしかった(パンが焼かれていて、カリふわでとてもおいしい。コースの感覚で、ちょうど食べ終わった頃に次が出てきた)』ということで品質においては満足感が高い食事ができたスタッフが多かったようです。
ホテルのような接客と清潔感 感じられる非日常と“らしさ”
サービスについては、『他のファミレスチェーンとは一味も二味も違う!あらゆる場面において人的サービスの提供が際立っている』という点。『スタッフはみなお辞儀の際、おなかのところで両手を揃えて頭を下げていた。ホテルスタッフのようで店舗のイメージを守っていると感じた』の声もありました。
実際に店内で観察してみると『店内はとても混雑していたが、店長(名札より)とベテランそうな女性スタッフ、若めの女性スタッフが目配せや手を使った合図で息を合わせて応対していた。常にお互いの様子を見ていて、店長が時々スタッフと小声で打合せや指示出しをしているようだった。手が足りない中で役割にそれぞれがすぐに入っていく様子が見られ、素晴らしいと思った』と、そのレベルが驚きでした(実は私も久しぶりの訪問で驚きました)。
料理の注文時も『ハンバーグの種類を伝える際に「ガーリックじゃない方でお願いします」と伝えたところ「目玉焼きが乗っている方でよろしいですね」という確認があった(確認ミスの防止)』など的確な対応でした。
料理の提供時も『「こちらサラダでございます」「こちらオニオングラタンでございます」など商品名を読上げるのはもちろん「(オニグラ)蓋を開けてよろしいでしょうか?大変熱くなっているのでお気をつけ下さい」「ごゆっくりどうぞ」と気遣いの言葉や配慮のある一言を添え、表情は笑顔を伴っていた。席を離れる都度お辞儀をしていたのが印象的』と丁寧な対応が印象的でした。
メインの食事後も『食事をし終わったあと、3分程度で「デザートをお持ちしてもよろしいでしょうか」という案内があり、すぐにアイスが出てきた』とタイミングよく提供がなされており、満足感も高かったようです。
『スタッフの身だしなみはどなたも清潔感があって女性は髪を後ろでまとめていて、姿勢も正しくまるでホテルや客室乗務員のようなたたずまいだった。男性は黒いスーツズボンに白のワイシャツというスタイルで髪の色は黒色だった』と身だしなみも万全で、また『店内ラウンドの際やコーヒー豆を補充している際などもフロアに目配りしているのがわかり、お客様を気にかけている様子がわかった。お客様退店後の片付けも迅速でスプレーを使って丁寧に拭きあげていた』と、よく教育・訓練がなされたスタッフが店内に安心感を創り出している空間だったようです。精算の際も『レジカウンター後ろにあった店長の写真が少々怖そうで、怖そうですねと触れてみたら、「そうですね」と笑って、「でも怒られたこと一度もないんですよ」とニッコリと答えてくれた』とフレンドリーな対応、“また来店したい”と思わせるものでした。
『店内はなんとなくレトロで、よくあるピクトグラムなどは非常口以外一切使われていなかった。ふんだんに使われたライト、キッチンで調理している様子が見えるカウンターなど、ファミレスでは削減しているところがそのままなのも大きな理由だと感じた』ということで『広々として、座り心地の良いソファやイステーブル、照明、カーペット、絵画などインテリアに凝っていて高級感が漂う雰囲気で、非日常的だけど居心地が良い空間づくり』『BGMは会話を邪魔しないボリュームで、呼び出しボタンの音も小さく設定しているようで、雰囲気を壊さなかった』というコメントもありました。
クレンリネスについても『テーブルにべたつきはなく清潔。お客様が退店した後にスタッフはすぐにバッシングをしていた』『トイレはチェックリストに基づいて2時間に1回の清掃が実施されており清潔で安心感があった』『ドリンクバー周辺やカウンターは整理整頓されていたり飲み物のこぼした跡やゴミなどなく清潔だった』とポイントになる部分には目が行き届いていました。
『施設は古いが掃除は行き届いている』というコメントこそは“これぞクレンリネス=清潔感”と納得できるものでした。
価格は『全体的に高めではあるので、日常的に利用するのは少し難しいかもしれないと感じた。メインのメニューにライスやパンは含まれないので、食べ盛りの家族がいる世代は更に高めになるかも』とあったり『量と味を考えると納得できるが、普段使いには躊躇するお値段。ステーキも専門店のようなお値段だった』という意見がありました。
しかしこれこそが“ロイヤルホスト”でしょう。専門店の味のステーキ、サラダ、ホテルのような接客、応対、レトロで居心地のいい施設、行き届いたクレンリネスで日常のなかの“ちょっとした贅沢”“非日常”の特別感を味わえる点こそがQSCのバランスがとれた“ロイヤルホストのロイヤルホストらしさ”と言えるかもしれません。この“らしさ”は他の外食業の皆さんも、そして小売業の人たちも、一度、体感してみる価値はあると感じた視察でした。
詳細な調査結果は「優秀チェーン7つのエクセレント」を下記よりダウンロードして頂けます。
ぜひダウンロードしてご覧くださいませ。
著者プロフィール
三浦美浩
1987年 東北大学卒業、損害保会社を経て商業界入社、「食品商業」編集長、「販売革新」編集長
2011年8月 商業界取締役就任
2017年1月 独立しロジカル・サポート㈱設立
2020年4月 エイジスリテイルサポート研究所所長に就任(兼任)、現在にいたる
長年にわたり小売業の現場に関わり、執筆活動と共に、分析や提言も行っている。
従業員教育にも関わりがあり、現場に即した研修には定評がある。
実査、報告書
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング㈱ 調査員