「ウエルシア薬局」調査結果 【無料資料ダウンロード】
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング(ARC)は、ミステリーショッピングのプロ集団であり、店頭のリアルな実態と、それが顧客の感情、再来店の意向に与える印象などを調査・分析するスペシャリスト集団です。ARCスタッフ、調査員が好調企業の“店頭の実態=FACT”を調査し、それが顧客の「また来たい」という印象(これを『再来店動機』と呼んでいます)に与える要因を解析するのがこの連載です。
今回は2024年初頭に大きな話題となった企業のひとつ、ウエルシアホールディングスについてのレポートです(調査対象はホールディングスの完全子会社のウエルシア薬局<以下、ウエルシア>、調査時期は2023年末です)。
改めてですが、今回、話題になったのは日本第2位のドラッグストア(DgS)チェーンのツルハホールディングスと、第1位のウエルシアホールディングスの“業界トップ2”の経営統合で、2兆1000億円超のDgSチェーンが誕生させるというものです。この統合で国内の4分の1の売上高を占める世界第6位の巨大チェーンが生まれ、近い将来には年商3兆円のアジアナンバーワンのグローバル企業を目指そうという大構想が明らかになっています。
数多くのPB商品の充実ぶり ネーミング、包装など独自
今回の経営統合の目的のひとつに「プライベートブランド(PB)商品の共同開発や相互供給の推進」があります(2月28日ニュースリリースより)。改めてウエルシアの店頭を見ると、そのPB商品の充実ぶりに目を見張りました。
『PBは“からだWelcia”と“くらしWelcia”の2ブランドを展開して』いて『“からだWelcia”の食品は素材や製法などに拘り低糖質・高たんぱく・低カロリーなどダイエット中には嬉しい健康的な商品が充実』しているし『“くらしWelcia”の生活日用品は家事が楽になるような機能性が高い消費者目線で開発された暮らしに関わる商品が満載』でした(以下、『』内は別紙の調査スタッフレポートより引用)。
PB商品の特徴の第一はデザインで『パッケージは方眼紙のような模様をあしらったシンプルで目を引くデザインで水色とグレーがベースの色使いは清潔感があって好印象。柄が強すぎないシンプルな方眼チェックは、色合わせがしやすくガチャガチャしないので家の中にも置きやすい(遠目から見ても認識できるので分かり易かった)』と評価が高かったようです。
第二はネーミングで『PB商品には、何の商品かわかりやすい商品名がつけられていた(バラの香りがハナやかなトイレットペーパー/ネピアとつくったたっぷりティッシュ/発酵エキスでぷるっぷるに整えるお米のフェイスマスク)』と独特でした。商品名には英語表記もあり『ああ、気持ちいい 鼻膣拡張テープ=Wow I can Breathe Again Nasal Strips』や『誰も傷つけたくないネットスポンジ=The Peaceful Net Sponge』などがあり、英語がそれほど得意でない筆者は“こんな表現ができるのか!”と勉強しながら買物してしまいました。
他の商品名にも『あ、止まらないサクサクオクラ/ザ・国産のコリっと三陸茎めかぶ/ほろにがサクサクぎんなん/ガーガーをスヤスヤにするおやすみテープ』などがあり、正確に商品の特徴を伝えながら、開発担当者も“面白がって”ネーミングをしている印象も感じました。前回レポートのドン・キホーテとも共通する商品開発の姿勢でしょう。
第三は売価設定。女性の調査スタッフの声には『気になったのは“少しだけ健康に気を使っている商品”で他社製品より少し安いという価格設定が魅力だった(美容や医療、食品は肌につけるもの、身体に入れるものなので、余りに安すぎると品質が不安になってしまう)』というものがあり、買う側の心理を考えた売価設定がなされていると感じました。
『大妻女子大とコラボレーションをした健康に良い食品も販売されていてドラッグストアらしいと感じた(大妻女子大学×Welcia スマイルケア食)』などもあり、まさにナショナルブランド商品の存在しない商品領域においてDgSらしい独自ブランドの“本物のPB”を創造しているウエルシアの商品の進化に驚きました。
売場づくりや値頃価格訴求 レジサービスも顧客満足徹底
商品だけでなく売場づくりでもさまざまな工夫がありました。
『シャンプー、ハンドソープ、洗濯洗剤、柔軟剤、掃除用品、ブルーレットなどかなり多くの商品に香りのサンプル(テスター)が付いていて、とても便利だった(普段ハンドソープや掃除用品の香りサンプルは設置されておらず、商品購入時に迷うが、この売場はとても参考になると感じた)』と良い印象をもったスタッフがいました。
価格面でも『期間限定で「生活応援」値札カードや「ズバリ価格」の商品はお得な商品という事がすぐに分かる』『まとめ買いを促すPOPと価格設定でアップセルの訴求をしていた』ようです。
イオングループの中核企業として『“からだWelcia”“くらしWelcia”の他にイオングループの医薬品は“ハピコム”食料品は“トップバリュ”」の商品も見られた<TVBPぷりっと仕上げたちくわ・5本(98円、本体価格・以下同)/TVBP濃甘ソースの焼きそば(98円)/TVBP 爽やかレモン風味の塩焼きそば(98円)>』し、『ポイント○○倍のプログラムが多くあり、買物を工夫する楽しさを感じられた』などの声もあります。物価上昇し生活が厳しい時代の価格訴求も重視しているのでしょう。
顧客満足を追求する取り組みは最後のクロージングのレジでも徹底されていて『レジは2台とも接客中で、どのレジでも“Tポイント”と“イオンポイント”の確認を実施していた』と固定客づくりを意識した対応でした。『袋が必要なお客様には「袋の大きさと枚数確認」をもれなく実施していた。会計後のカゴを袋詰め台まで運んでくれるもの大変助かる(特にお年寄りや赤ちゃん連れは大変ありがたいと思う)』『夕方は常にレジが1通路並んでおり、更に横に曲がった方まで並んでいる。その際レジスタッフは手を大きく挙げて「こちらにどうぞ!」と促して、お客さまの待ち時間が少なくなるようさばいているのが印象的』でサービスのレベルも好印象だったようです。
顧客の人気生む“業態”問題 バランス追求し支持集める店
商品だけでなく店舗全体の買物の便利さもウエルシアの強みと言えます。
ひとつは生鮮食品や惣菜まで扱う品揃えの広さで『精肉と青果は充実していて、ちょっとしたスーパーより品揃えが良いと思った』『カット野菜や量が少ない個別包装の青果も多く、単身者でも使いやすく、直ぐに調理ができる点もとても良いと思った』などの声や『お弁当やお惣菜は種類も多く充実していた。24時間営業ということを考えると、非常に便利だと思った』という感想もあります。
2つ目のウエルシアの強みは調剤薬局の多さでグループ2800店の内、74.4%の2113店で調剤を併設しており(2023年11月末)『調剤薬局も併設で薬も購入可能』という点は便利だし、専門性の高い『歯科医院でしか販売されていないような商品もあり目をひいた』という驚きもありました。
3つ目には24時間営業が特徴で『24時間営業なのでスーパーマーケット+ドラッグストア+コンビニが合体したような新業態という感覚だった』という印象です。実際の『ウエルシアと言えば文房具と学校用品の豊富さ!小学生までの子どもは急に用意しなくてはいけない用具も多く、夜でも開いているウエルシアには何度も助けられている』という生活実感からも、ウエルシアの便利さ、良さが伝わってきます。
注目は『どの店舗も、駐車場の駐車スペースが広く、余裕のある2重線で区切られており車が停めやすかった』『通路は広くとられており、床面も蛍光灯が映るくらい綺麗に保たれていた』『ウエルシアの店舗は、新しいところばかりではないと思うのに、どこもとても清潔で整っている。特に店内がとても明るく感じるので、夜遅くても入りやすく安心な印象がある(照明の関係か)』というコメントです。
こうした営業形態や店舗の構造、駐車場の設置形態は、チェーンストア用語で“業態”問題と言われ、商売の人気を左右する最も重要な要素と考えられています(こうした営業形態を類型化したものを“業態類型=フォーマット”と言い業態とは別の用語と考えられます)。
ウエルシアが現状で日本でナンバーワンのDgSチェーンとなった要因は活発なM&Aだけではない、普段からの営業形態や店舗形態、いわゆる“業態”の人気が大きかったのだろうと今さらながら感じました。
ウエルシアホールディングスの決算関係資料“統合報告書”には自社の目指す姿として「地域No.1の健康ステーションへ」という目標が掲げられています。また冒頭の経営統合のニュースリリースにはウエルシアは「健康をテーマとした付加価値の高い商品やサービスを提案する“生活のプラットフォーム”“専門総合店舗”を目指し、“調剤併設”“カウンセリング”“深夜営業”及び“介護”を軸としたビジネスモデルを進化」させ「近隣地域生活者の健康や美容、そして豊かな暮らしをサポートする店舗づくりを目指」すと記します。
この言葉通り、ウエルシアグループは品質にも価格にも過度に偏るすることなく、専門を深めながら総合も追求し、かつ深夜営業や独自商品でオリジナリティを追求する“バランス経営”と、その良さを感じ取れた今回の調査結果でした。
詳細な調査結果は「優秀チェーン7つのエクセレント」を下記よりダウンロードして頂けます。
ぜひダウンロードしてご覧くださいませ。
著者プロフィール
三浦美浩
1987年 東北大学卒業、損害保会社を経て商業界入社、「食品商業」編集長、「販売革新」編集長
2011年8月 商業界取締役就任
2017年1月 独立しロジカル・サポート㈱設立
2020年4月 エイジスリテイルサポート研究所所長に就任(兼任)、現在にいたる
長年にわたり小売業の現場に関わり、執筆活動と共に、分析や提言も行っている。
従業員教育にも関わりがあり、現場に即した研修には定評がある。
実査、報告書
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング㈱ 調査員