「カインズ」調査結果 【無料資料ダウンロード】
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング(ARC)は、ミステリーショッピングのプロ集団であり、店頭のリアルな実態と、それが顧客の感情、再来店の意向に与える印象などを調査・分析するスペシャリスト集団です。ARCスタッフ、調査員が好調企業の現状の“店頭の実態=FACT”を調査し、それが顧客の「また来たい」という印象(私たちはこれを『再来店動機』と呼んでいます)に与える要因を解析することで、小売業、チェーンストアの皆さんにお客さまの “琴線に触れるポイント”“また来たいと思ってもらえる勘どころ”を伝えたいと考えました。
今回はホームセンター最大手のカインズをお届けしたいと思います。
PBのアイテム数の多さと包装 ネーミング、使い勝手などに感心
今回、調査スタッフたちが最も驚いたのは、なんといってもそのプライベートブランド(PB)商品の豊富さでした。
声にも『PB商品がとにかく魅力的!(あらゆる分野約13,000点展開・全売上高の40%を構成)』『家事に便利な調理器具などがたくさんあった』との声が多数ありました(『』内は全て調査スタッフのコメント)。
特に現在のカインズは、自宅の時間が増えたこの間のトレンドをつかんで“楽カジ”シリーズとして調理や掃除、洗濯などの道具類をPB化。そんな商品を使ってみた感想としては、キッチンでは『もちやすいオールステンレス三徳包丁170mm⇒ハンドルと刃が一体型で汚れにくい』『折りたたみできる鍋敷き⇒買ってよかった』などの声がありました。
ランドリーでは『洗濯ハンガー⇒とにかく軽い・洗濯ばさみが丈夫・交換用もあり、何かあっても安心』『洗濯ばさみが2種類あり、普通のタイプと下にひっぱるだけで痛まずに外すことができるものがあった』などその便利さと、“洗う・干す・しまう”シーンすべてに対応しているバラエティにも驚きがありました。
特徴的なのはそのネーミング。“引っ張って取り込みやすいインテリアハンガー”“ケースがいらないカーペットクリーナー”などとあり、女性の調査スタッフなどは『商品の特徴が商品名になっている⇒とても分かりやすくて商品に興味がわくので、思わず手に取ってどんなものか見たくなった』『箱を見れば商品がわかる、商品名をみれば商品がわかる商品展開になっている』などに感心する声が多かったようです。
カインズの場合、こういったシリーズのPB商品はシンプルな“白”などの商品が多いです。こうすることでたくさんの種類を購入しても部屋の中で調和が生まれるし“ぐちゃぐちゃ”した感じにならないメリットがあるからです。そのように色をシンプルにしながらPB商品の“隣同士の違い”が一目で分かるようにするパッケージの工夫が、こういったPB商品には見られます。
園芸の育て方の分かりやすい表示 女性客にもとっつきやすい店に転化
買物のしやすさ、分かりやすさは他の部分でも工夫がなされていました。
『フライパンの比較表では、軽さ、焦げ付きにくさ、ガス用なのか、IH用なのか一覧でわかりやすい表示されていた』『写真つき商品説明多数あった』など個々の品種、カテゴリーの中で、自分の家庭で何を選択すれば最適なのかが、一目で分かるような表示がたくさんありました。
外売場の園芸コーナーなどでは花の苗などには『統一された説明表示(植物の種類の1年草・多年草の違いや水やり、日当たりなどの育て方の注意点がイラストで分かりやすく説明されていた)』など、コロナ禍で自宅でのガーデニングなどを始めた生活者が、知識がなくても植物をきちんと育てられるようなガイダンス、表示がありました。
そうした店側の工夫は『カインズの店頭は、商品名、商品価格が分かりやすい表示がされていた。スタッフに尋ねないでも、商品選びができるような工夫やPOPが随所に見られた』『フライパンとかのキッチン用品もPOPが統一されていて、写真でイメージを掴めて、商品名や特徴が大文字で書いてあって、看板も統一感があるのでゴチャゴチャしていなくて読みやすかった』など前向きの評価、好印象につながりました。
筆者の感想で言えば、ともすればホームセンター業態はDIY、金属、木材などの扱いが多いことから“男っぽい”店、売場が多く、“女性にはとっつきにくい”“買物がしにくい”売場が目立つ印象でした。
しかしコロナ禍で売場が広く、密にならず、自分の車でゆったり買物ができるホームセンター業態が評価され、コロナ初年度の2020年にはホームセンター業態は7年ぶりの売上増になりました(経済産業省「商業動態統計」より)。ただ2020年当時、売れたのが仕事で使いやすい机や、自宅を改良したりするDIYなどが多く、購買頻度が低い、買い替え需要の少ない商品が多かったことから、多くのホームセンター業態は翌2021年以降は厳しい営業状況になっています。
そういった中でカインズは、女性が担うことが多く、しかもより頻度多く日常に近い家事などの“不”にスポットを当て、それに便利な道具をPB商品で提供したり、使ってなくなる洗剤などを『大容量商品を安く提供(アリエール2700×3⇒2394円)』などまとめ買いや大容量、低価格などで訴求して、女性客に高い使用頻度=購買頻度で使ってもらえる店へと転化しようとし続けているようです。
その際に重要に感じるのはカートを使える広い通路、買いやすい表示であり、女性客もゆったり買物をしたくなる『ホームセンターの域を超えたオシャレさ。まるでオシャレ雑貨店にいるような感じだった』『ただ商品を買いに行くだけでなく、他にも楽しくなるしかけがあった(無料ドッグラン・登録すると1日1時間無料で使用できる/カインズカフェ』などの仕掛けなのでしょう。
しかも女性に買いやすい店は男性にも買いやすいのは当たり前で、結果として現在のカインズの買物をしやすい店づくりの努力は、客層の拡大につながっているようです。店内には家族連れで買物する姿も多数ありました。
酒、ペットの核売場が人気 アプリ活用で変化し続ける店
売場で特徴的なのはコロナ禍で伸びた酒売場、ペットフード&用品売場などが極端に拡大されている点です。合計の規模は大型店でも売場の4分の1を占めるほどでした。
『CAINZ LIQUORはお酒専門のネット通販サイト、と大きなPOPがあって、売場では物足りない場合や、こだわる場合に補完される仕組みだった。(プレミアムなお酒1400種以上取り扱い)』『「Pet’sOne(ペッツワン)」(ペッツワン株式会社)はカインズが展開するペットショップで、店舗の中では存在感のあるコーナーになっている』『ペット用品(犬)のカインズオリジナル商品やアイデア商品など、多くの品揃えが、リアル店舗とネットと連携されていた』などの印象もありました。
こうした酒売場やペット用品売場はチェーンストア用語で言えば“品揃えの深さ=ある品種のみにアイテム数が多いこと”“品揃えの幅=同時に使う商品が揃っていること”が両立した売場と言えるでしょう。
他にも『見せ方でうまいと思うのは、幕張店のキャンプ用品売場。それぞれ違う商品だけど具体的な使い方が売場づくりを通して提案されていてイメージが湧いて、見ているだけでワクワクするような商品の展示方法が素晴らしい』といった声もあり、大型店らしく来店の目的となる“核売場”が多数の箇所で確立されていたことが、調査スタッフの感想からも分かりました。
広い売場の“不”を解消するべくアプリなどの活用も進んでいて『アプリからマイストアを登録することで、探している商品の在庫数や売場の位置が分かる』『店舗内でフリーWifiがあり、簡単につなげることができて、店内でスマホアプリを使いながら買物ができた』などの声もありました。便利な買物ができそうです。
またスマホで注文して店舗で受け取れるBOPISなども揃っていて『欲しい商品を確実に、ということで「CAINZ Pick Upスタート」の幕も店内にあって、オンライン購入もできます、という取り組みも感心した』などの感想もありました。
既存のホームセンター的な売場もより分かりやすくなっているし、産直の野菜売場やカフェなど新しい売場、取り組みもカインズの店には随所に見られました。変化する世の中に対応して“変化し続ける、その姿”こそが、調査スタッフの好印象に直結したことがよく分かる調査結果となりました。
詳細な調査結果は「優秀チェーン7つのエクセレント」を下記よりダウンロードして頂けます。
ぜひダウンロードしてご覧くださいませ。
著者プロフィール
三浦美浩
1987年 東北大学卒業、損害保会社を経て商業界入社、「食品商業」編集長、「販売革新」編集長
2011年8月 商業界取締役就任
2017年1月 独立しロジカル・サポート㈱設立
2020年4月 エイジスリテイルサポート研究所所長に就任(兼任)、現在にいたる
長年にわたり小売業の現場に関わり、執筆活動と共に、分析や提言も行っている。
従業員教育にも関わりがあり、現場に即した研修には定評がある。
実査、報告書
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング㈱ 調査員