働きがいのある職場の特徴とは?メリットや企業の取り組み方法をご紹介

コラム

従業員の働きがいを向上させることが、企業にとって大きな課題となっています。
人材確保が困難となり、従業員の労働に対する価値観が多様化する中、企業は人材を確保しながら生産性を向上させる必要があるからです。

従業員が現在の仕事に対して働きがいを感じていれば定着率が高まり、生産性の高い労働力を維持していくことができるはずです。

そこで今回は、働きがいの概要から働きがいのある職場の特徴、メリットや企業の取組方法を紹介します。

今回の記事を読むことで、企業の働きがいを向上させるヒントを得られるはずです。

 

働きがいの概要

公益社団法人 国際経済労働研究所では、働きがいをワーク・モティベーション(仕事に対する動機づけ)と定義し、働きがいを高めるのは労働そのものの楽しさや興味であるとしています。

働きがいは、報酬など外から与えられるものだけでなく、労働そのものの楽しさや興味など内部から生れる動機によっても向上します。

職場環境や労働条件、給与などの外的要素は、働きがい向上に対して一時的な効果は期待できますが、それだけで継続的に働きがいを向上させるのは困難といえるでしょう。

継続的に働きがいを向上させるためには、労働そのものの楽しさや興味といった内部から生れ労働自体から得られるやる気にアプローチする必要があるのです。

 

ハーズバーグの二要因理論

ハーズバーグの二要因理論では、働きがいを決める要因として、「動機付け要因(Motivator Factors)」「衛生要因(Hygiene Factors)」があるとして、それぞれについて対応すべきとしています。

ハーズバーグはアメリカの心理学者で、二要因理論は、同氏の論文「How do you motivate your employees?(モチベーションとは何か?)」の中で提唱されました。

二要因理論によると、「動機付け要因(Motivator Factors)」とは、動機づけがあることで働きがいが向上する要因で、満足要因と呼ばれます。

 

たとえば、目標達成や承認意欲、仕事自体が好き、責任感などがあげられます。
これらの動機付け要因が増えることで働きがいは向上しますが、動機付け要因が減少したからといって、すぐに従業員の不満が増加するわけではありません。

一方「衛生要因(Hygiene Factors)」とは、不満足要因とも呼ばれ、給与、福利厚生、人事制度、職場環境、上司や同僚との人間関係などを指します。

これらの衛生要因が増えることで働きがいは向上しますが、衛生要因が減少すると、すぐに従業員の不満が増加します。

動機付け要因と衛生要因は、働きがい向上のためにどちらも必要な要素です。

 

たとえば、給与が全く増えなければ、目標達成や承認意欲は湧いてこないでしょう。

また、給与が増えても、仕事自体が好きでなければ、働きがいを感じることができず、転職を考える可能性も出てくるのではないでしょうか。

 

このように、動機付け要因は満足要因、衛生要因は不満足要因と呼ばれていますが、相反する要因ではなく、働きがい向上のためにどちらも必要なわけです。

企業が従業員の働きがいを向上させる取り組みを考える場合、動機付け要因、衛生要因ともに増やしていかなければならないでしょう。

取り組みの順番としては、それぞれの特徴から衛星要因を満たしたうえで動機付け要因の向上を目指すべきでしょう。

 

働きがいと働きやすさ

働きがいは、労働そのものの楽しさや興味など内部から生れる動機です。
一方、働きやすさは、職場環境がいい、残業が少ないなど、外的な要因によって生まれるものです。

企業は働きやすい職場環境や労働条件を整え、働きがいを感じる従業員を増やしていくことが理想的でしょう。

 

働きがいのある職場の特徴

働きがいとは、従業員自身の内部から湧き出てくる意欲から生れてくるものと、従業員が働く職場環境など外部要因によって形作られるものが、相互に補完し合って構築されたものです。

従業員が働き方を感じることができる働きがいのある職場にはいくつかの特徴がみられます。

この章では働きがいのある職場の特徴を紹介しましょう。

 

職場内のメンバーが信頼感でつながっている

働きがいのある職場の基本には信頼感があります。

メンバー一人ひとりがお互いに信用し、尊重し合うことで個々の従業員が誇りをもって自身の仕事を実行することができます。

職場には公正なルールがあり連帯感をもった職場環境が構築され、従業員個人が能力を最大限に発揮することができます。

働きがいのある職場という外的な要因を獲得することで、従業員は労働そのものの楽しさや興味を持ち内面的な働きがいを手にすることができるのです。

 

組織力を持っている

上司と部下といった序列や、内勤社員・契約社員・パートタイマーといった雇用形態の違いに関わらず、職場内のすべての人材が能力を発揮する組織力を持っています。

 

企業理念やビジョンが浸透している

企業理念やビジョンが従業員に浸透し、従業員一人ひとりが、企業の目標達成のために自分自身が何をしなければならないかという行動目標を明確に持つことができています。

 

有効なリーダーシップが発揮されている

職場を効率的に稼働させ、柔軟に対応し、効果的な戦略を立てることができる有効なリーダーシップが発揮されています。

 

イノベーションを起こす風土がある

最新の技術や時代の変化に対応して、持続的に成長するためのイノベーションを起こす風土や、働きがいをもった人材が存在します。

 

利益を上げている

システム化や業務フローの改善、売上アップ、経費削減など、組織の利益を上げ、企業の財務的な成長に貢献しています。

 

働きがいの向上によるメリット

働きがいが向上することは、労働そのものの楽しさや興味を感じながら働くことであり従業員にとって大きなメリットになります。

従業員一人ひとりの働きがいが向上することは、職場や企業全体にとって大きなメリットにつながります。

この章では、働きがいの向上による企業のメリットを5つ紹介しましょう。

 

業績アップ

働きがいの向上は、労働そのものの楽しさや興味を感じながら働く従業員の増加につながります。

働きがいを感じている従業員は、仕事に誇りを持ち、自律性が高く主体的に業務を遂行していきます。

そのため従業員個人の生産性が上がり、働きがいを感じる従業員の数が増えていく事でチームの生産性が向上し、最終的には企業全体の業績アップにつながります。

 

定着率の向上が期待できる

働きがいのある企業は高い定着率が期待できます。

働きがいのある企業は、従業員自身の内部から生れる目標達成や承認意欲、仕事自体が好き、責任感と、外的要素である、給与、福利厚生、人事制度、職場環境、上司や同僚との人間関係ともに増やして働きがいを向上させてきたはずです。

厚生労働省の令和2年雇用動向調査結果の概要に掲載されている「転職転入者が前職を辞めた理由」によると、「給料等収入が少なかった」「職場の人間関係が好ましくなかった」「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」「会社の将来が不安だった」「能力・個性・資格を生かせなかった」「仕事の内容に興味を持てなかった」といった離職理由が見られました。

 

これらのデータから働きがい向上に向けての取り組みは、離職を減少させる取り組みにもつながる可能性があることが推測されます。

また、働きがいを感じている従業員は、労働そのものの楽しさや興味を感じているため、主体的に企業のビジョンや企業理念を理解し、企業の目標達成のために自分が何をするのかという行動目標が明確です。

働きがいを感じている従業員は帰属意識が高いため定着が期待できます。

 

アイデアの創出

働きがいを感じている職員は、仕事自体が好きで興味を持っているため、業務改善に積極的に取組み、新しいチャレンジを継続していきます。

新しいチャレンジは、アイデア創出の機会になります。

 

新規ビジネスの創出

働きがいを感じている職員は、仕事が好きで楽しいため、新規ビジネスやイノベーションを創出する可能性を高めます。

 

人材の成長

働きがいを感じることで従業員は自身の経験を主体的に高速で積み上げていきます。

また、自律的に学習していく事ができるため、経験とスキルを満たした人材の成長が期待できます。

 

企業の取り組み事例

この章では、働きがいのある企業といわれている代表的な企業の働きがいのポイントと取り組み事例について解説します。

 

セールスフォース・ジャパン

セールスフォース・ジャパンは、顧客関係管理(CRM)サービスを提供する世界的な企業です。

セールスフォース・ジャパンの働きがいのポイントは、福利厚生制度や納得感のある報酬、仕事に行くことが楽しみである点です。

 

セールスフォース・ジャパンでは、働きがいの向上に向け、企業経営の基本として社員の成功をサポートし、社員一人ひとりの成長にフォーカスした行動を支援することを一貫して継続しています。

また、全従業員が参加している社会貢献活動がモチベーションアップにつながっており、コロナ禍の中では社員の安心安全を第一に考えた取り組みを実施しました。

企業トップから企業全体に、社員の働きがいが結果的に顧客サービス向上につながるという考え方が浸透しています。

 

アドビ株式会社

アドビ株式会社は、Adobe IllustratorやAdobe Photoshopなどのクリエイティブツールや、PDFの楚を築いたAdobe Acrobatなどのデジタルツールを提供するグローバル企業です。

アドビ株式会社の働きがいのポイントは、福利厚生制度や納得感のある報酬、ワークライフバランスが奨励されている点です。

 

社内の連帯感を高めるために企業トップが対話の機会をつくり、一人10分程度の対話を1年間で約600名行いました。

アドビ株式会社の顧客層は、小学生から大手企業・公官庁まで幅広いため、組織もダイバシティ―を意識し、多種多様な人材が信頼感を持って活躍することが必要だと考えています。

 

アドビ株式会社は、40年間継続して新たなプロダクトサービスを提供している企業であり、従業員は働くことに誇りを持っています。

トップは、従業員に自社製品を使用し自社製品を愛することをメッセージングしています。

 

組織の縦割りをなくすために、所属チームに関係なく参加可能な全体会議を実施しました。人事制度面では、メンバーがマネージャーと今後のキャリアや組織からの期待について対話する制度や、評価を年に1度のレビューから四半期に1度の枠の中でマネージャーとメンバーで納得感のある評価をするため頻繁にコミュニケーションが可能な制度に変えています。

 

株式会社 コンカー

株式会社 コンカーは、出張・経費管理、請求書管理などのクラウドサービスを提供する企業で、国内経費精算市場において高いシェアを誇る企業です。

働きがいのポイントは、会社に行くことが楽しみである点とワークライフバランスが奨励されている点、経営・管理層の言行が一致している点となります。

 

働きがいを高めることで業績が高まり経営の向上につながるという考えかたをもとに、業績の拡大と同時に従業員の働きがいを目指すという経営方針をトップが打ち出し従業員と共有化を図っています。

 

成長を加速する会社のカルチャーとして社員同士で高め合う文化を掲げ、高め合う文化を推進するために、フィードバックし合う文化、感謝し合う文化、教え合う文化という取り組みを実行し働きがいを実感できるカルチャーを醸成しています。

 

具体的には、コアバリューや理念を文面だけでなく、仕組化してサイクルを回していく役割を担うCCO(チーフカルチャーオフィサー)が中心となり以下の取り組みがすすめられています。

 

 

  •  ●全社員が一日業務を離れて会社の未来について考える「オフサイトミーティング」の実施。
  •  ●2人で同じ画面を見られるように設計された1on1ブースをオフィスに設置。
  •  ●部活動を積極的に推進して、従業員のつながりを広げる仕掛けを実施し、新しく企業に入社した従業員などが趣味の仲間を見つけやすいように部活動を紹介する掲示などを実施。
  •  ●リモートワークでも従業員が安心して良好なコミュニケーションが取れるように、ルールブック(コンカー・スタイル)を作って対応。たとえば、さくっと電話ルール編として、「ためらわず電話で聞こう」「電話は無理して出なくてOK(出られませんは遠慮なく)」「コールバック不要(折り返しコールはしなくてOK・用事がある人がかけ直そう・再度のコールがなければ忘れてOK)」というルールを設定。

 

まとめ

人材確保が困難となり、従業員の労働に対する価値観が多様化する中、従業員の働きがいを向上させて人材を確保しながら生産性を向上させることが、企業にとって大きな課題となっています。

 

働きがいを向上させることは、従業員と企業に多くのメリットがあり、働きがいのある職場にはいくつかの特徴がみられます。

今回の記事を参考に、企業の働きがいを向上させる取り組みを検討してみましょう。

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著者プロフィール
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング編集部

エイジスリサーチ・アンド・コンサルティングは、客観的調査データを活用したCSマネジメント体制を確立。ミステリーショッピングを中心とする「トータル・コンサルティング」で、お客様の店舗に最適なソリューションをご提案します。