小売業がSNS販促をはじめるための手順とは?
小売業を営む中小企業では、SNS販促の活用をはじめたいが「準備する時間が取れない」「手順が分からない」といった理由で、なかなかスタートできないケースがあるのではないでしょうか。
一般的に大企業と比べると中小企業が販促にかけられる人材や予算は決して潤沢だとはいえません。
SNS販促をうまく活用すれば、少ない人材で予算を抑えて販促効果を出すことが可能となります。
今回は小売業のSNS販促活用に注目して、はじめるための準備と手順を解説します。
なぜSNS販促活用をはじめるのか?
SNS販促をはじめるための準備として、「なぜSNS販促活用をはじめるか?」について整理しておきましょう。
低予算で販促をはじめられる
中小企業の多くがSNS販促活用をはじめる大きな理由が、低予算で運用できる点です。
SNSの活用は、料金がかかるプランを採用しないかぎり、無料ではじめることが可能であり、継続して使用するための運用費用もかかりません。
低予算ではじめられる販促であるため、中小企業と大手企業との差が生まれにくい点もSNS販促の魅力です。
企業のブランディング向上
中小企業にとって、消費者に自社の魅力や商品やサービスの魅力を広く発信してブランディングを高めることは非常に大きな課題です。
しかし、大規模な販促には人材と費用がかかるため、従来は課題解決が困難でした。
近年はSNS販促活用によって、従来では考えられない広範囲の消費者に対して、自社の魅力や商品・サービスの魅力を発信することが可能となりました。
SNSで発信する内容によって、企業は消費者の好感・信頼を得ることができ、ブランディング向上につなげることができるのです。
新規顧客獲得の可能性を高める
SNS販促をはじめることで、企業は今までになかった販促手段を手に入れることができます。SNSは、従来行ってきた販促手段とは違う手法ですので、今まで発掘しきれていなかった新たな消費者層へ情報発信できる可能性が高まります。新たな消費者層への情報発信によって、新規顧客獲得を目指すことができるわけです。
また、SNSの多くは、企業から消費者に向けての一方的な情報発信ではなく、相互で情報をやり取りすることが可能です。消費者からのダイレクトな情報を企画や商品開発に活かすことで、消費者ニーズにあった取組や商品開発が可能となり、新規顧客獲得の可能性をさらに高めることになります。
リピーターの増加
リピーターを増やすことは非常に重要です。
SNSは簡単に更新できるため、高頻度に消費者向けの最新情報を発信することができます。
既存の顧客は継続的に企業からの最新情報をキャッチすることができるわけです。
また、SNSは企業と消費者をつなぐコミュニケーションツールとしての機能を有しているケースが多いため、既存の顧客は安心して商品やサービスを使用し、簡単にサービスの追加や追加購入を行うことができます。
SNS活用によって、企業は大きな課題であるリピーターの増加を推進していくことができます。
小売業がSNS販促を成功させるためには準備が必要
SNS販促をうまく活用すれば、少ない人材で予算を抑えて販促効果を出すことが可能ですが、準備と手順を理解して、計画をたてて実行していかないと、期待していた効果を得られない可能性が高まります。
この章では、小売業がSNS販促を成功させるための準備について解説します。
年代別SNS利用率を把握する
SNS販促のターゲットのひとつに、年齢層があります。
小売業がSNS販促をはじめる際には、年代別のSNS利用率を把握しておく必要があるでしょう。
商品やサービスがターゲットとしている年齢層で利用率が高いSNSは、販促に活用するツールに採用すべきでしょう。
総務省による「令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、年代別SNS利用率は下記の内容になっています。
LINE
全世代の利用率が90%を超えており、ほかのSNSと比較して群を抜いた利用率となっています。
年代別でみると上位から20代97.7%、40代96.6%、30代95.6%、10代93.7%、50代85.4%、60代76.2%となります。
最も低い60代でも76.2%の利用率があり、全世代で利用率が高いSNSです。
男女別の利用率は、男性88.0%、女性92.7%となっています。
全世代の利用率が42.3%で、LINEに次いで利用率が高いSNSです。
年代別でみると上位から20代79.8%、10代67.6%、30代48.4%、40代38.0%、50代29.6%、60代13.5%となります。
LINEと比較すると20代、10代といった若い年代の利用率がほかの年代と比べ高いことが特徴的です。
男女別の利用率は、男性42.7%、女性41.8%となっています。
全世代の利用率が31.9%で、利用率だけで考えるとLINE、Twitter、Facebook、Instagram、動画系のSNSであるYouTubeの中でもっとも利用率が低いSNSです。
一方で、30代、40代といったミドル世代の利用率が高く、年代別でみると上位から30代48.0%、40代39.0%、20代33.8%、50代26.8%、60代19.9%、10代19.0%となっています。
男女別の利用率は、男性33.4%、女性32.1%となっています。
全世代の利用率が42.3%で、Twitterと同率でLINEにつぎ利用率が高いSNSです。
年代別でみると上位から10代69.0%、20代68.1%、30代55.6%、40代38.7%、50代30.3%、60代13.8%となります。
10代20代の若い世代から30代までの年代に人気があるSNSといえるでしょう。
男女別の利用率は、男性35.3%、女性49.4%となっており女性人気がうかがえます。
YouTube
YouTubeは、動画系のなかで、圧倒的に利用率が高いSNSです。
全世代の利用率が85.2%で、LINEと同様利用率が高くなっています。
年代別でみると上位から20代97.2%、10代96.5%、30代94.0%、40代92.0%、50代81.2%、60代58.9%となります。
10代から50代まで広い年齢層で利用されているSNSです。
男女別の利用率は、男性87.9%、女性82.5%となっています。
参照:総務省「令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」
コンプライアンスを理解する
SNS販促は、広く消費者に向けて情報を発信するため、コンプライアンスは必ず厳守しなければなりません。
法令順守はもちろんですが、法律で決められていることだけでなく、社会通念や常識についても必ず順守しなければなりません。
近年、企業がSNSで社会通念や常識から外れたとされる情報を発信したことで、大規模なクレームが発生し、不買運動など社会的な問題に発展するケースも珍しくありません。
セキュリティを理解する
近年、悪意のある攻撃者からのサイバー攻撃が巧妙化し、企業が運営するSNS販促もその対象となりかねません。
たとえば、SNSツールの運用に必要なIDやパスワードが悪意のある攻撃者に盗まれてしまうことで、SNSアカウントが乗っ取られ、SNSの書き換えや削除、間違った情報の発信などが実行されるケースがあります。
SNSの運用にあたっては万全なセキュリティ対策が必要です。
小売業がSNS販促をはじめるための手順
小売業がSNS販促を成功させるための準備を解説しましたので、次に具体的な手順について解説します。
SNS販促をはじめる際には、現状で考えうる将来のSNSの目的を達成するための計画を明確に立てておく必要があります。
SNSをはじめた後でも継続的な効果測定と分析が必要で、分析をもとに改善計画をたて、さらに実行していくことが重要です。
小売業がSNS販促をはじめるための具体的な手順は、以下になります。
1. 自社の強みを分析する
将来のSNSの目的を達成するための計画を明確に立てるためには、現状分析から始める必要があります。
すでに多くの企業がSNS販促活用をスタートしていますので、消費者にキャッチされるSNSを発信するためにも強みの分析は重要です。
現状分析では、企業自体のブランディング、商品やサービスの特徴・強み・魅力・メリットなどの項目を決めてピックアップするのが一般的です。
現状は、限られたメンバーで洗い出すのではなく、社内アンケートや顧客アンケートなど広範囲でデータをとり分析しましょう。
調査や分析が難しいと感じる中小企業の場合、スキルと経験のある専門的な調査員が自社の強みを客観的に調査し、そのデータを基に分析するコンサルティングサービスを行う企業に調査依頼することも選択肢のひとつになります。
2. 目的を決める
現状分析ができたら、現状で考えうる将来のSNSの目的を決めていきます。
たとえば、以下のような目的でSNS販促が活用されています。
・ブランディング向上
・新規顧客数の増加
・リピーターの拡大
目的が大きくて具体性に欠ける場合は、以下のように細分化していきましょう。
・広範囲の消費者への商品やサービスの発信
・商品やサービスの使い方の発信
・顧客とのコミュニケーション
・ECサイト・ホームページなどへのリンク
3. ターゲット・目的を明確にする
SNS販促のターゲットのひとつに、前述した年齢層があります。自社の商品やサービスの対象となる年齢層にあったSNSツールを選択します。
SNSツールの代表的なものとして、LINE、Twitter、Facebook、Instagramと動画系のSNSであるYouTubeがありますが、それぞれ特徴が異なりますので、現状で考えうる将来のSNSの目的にあったSNSツールを活用します。
SNSツール活用のヒントは次章で解説します。
4. SNS担当者と作成ルールを決める
SNS販促は少ない人数で運用できる手段ですが、継続的な情報の発信や記事内容のリライト、SNS対策など、販促効果が期待できるSNS管理にはある程度の業務量が発生します。
中小企業の場合、兼任でSNS販促を実施するケースが多くなることが想定されますが、管理担当者は決めておくべきでしょう。
また、複数の従業員や外注したライターが記事を作成する場合は、記事の内容について以下のようなルールを決めておく必要があります。
・テンプレート
・文体
・禁止事項
・コンプライアンス
・セキュリティ
5. 継続して発信し続けるルールを決める
消費者に選ばれるSNS販促で重要なのが継続して発信し続ける点です。
消費者は最新の情報を求めていますし、更新日が古いと情報として信頼されない場合があります。
SNS販促をはじめる際には、継続して発信し続けることができるように、ルールを決めておきましょう。
たとえば、記事の更新サイクルや月単位の発信回数、リライトの時期など、SNS運営管理スケジュールのルールを決めておくことが重要です。
6. ECサイト・ホームページなどの整備
SNS販促活用をはじめると、ECサイト・ホームページへの流入が増加することが期待できます。
ECサイトは商品やサービスに直接結びつくサイトですし、ホームページは企業や商品・サービスについてより深く知ってもらうサイトになります。
成果を出すためには、ECサイト・ホームページなどを整備しておく必要があるでしょう。
小売業がSNS販促をはじめるための活用ヒント
小売業が販促のために活用しているおもなSNSといえば、代表的なものとして、LINE、Twitter、Facebook、Instagramと動画系のSNSであるYouTubeがあげられるでしょう。
多くの小売業は、それぞれのSNSの特徴を考えて、複数のSNSを販促に使っています。
SNS販促をはじめる際には、どのような目的でどのSNSを活用するかが、販促効果を左右します。
小売業がSNS販促をはじめるためのヒントとして、SNS販促の目的ごとにどのSNSの活用が適しているかを解説していきましょう。
新規顧客の獲得で活用するSNS
小売業で新規顧客を獲得するための集客に広く活用されているのがInstagramです。
10代から30代の女性の利用率が高いので、この年代をターゲットとする商品やサービスの集客に特に適しています。
Instagramは、画像や動画が中心のSNSのため、消費者の視覚や聴覚に直接訴えかける販促を実行することができ、消費者の体験欲求を高めることができます。
リピーターを増やしたい場合に活用するSNS
リピーターを増やしたい場合に適しているのがLINEです。
SNSの中でLINEはコミュニケーションツールとして優れているといえるでしょう。
企業は簡単に既存の顧客に頻繁に情報を発信することができ、LINEを受け取った顧客は、企業と1対1のコミュニケーションを取っている印象を感じます。
顧客から企業に対しての質問や問い合わせも簡単に行えることから、サービスの追加や追加購入につながる確率が高まります。
拡散が第一目標の場合のSNS
情報の拡散に適しているSNSはTwitterです。
Twitterのリツイート機能によって、うまくいくと企業が発信した情報が短時間で大規模に拡散します。
また、20代、10代といった若い年代の利用率が高いので、この年代をターゲットとする商品やサービスの情報拡散に特に適しています。
ホームページのように活用するSNS
小売業に中には、ホームページを設置しないで、Facebookをホームページのように活用しているケースがみられます。
Facebookは、ホームページより簡単に更新できるため、消費者に届けたい情報をタイムリーに発信することができます。また、掲載できる情報量が多く、予約やEC機能も備えています。
まとめ
小売業がSNS販促をはじめるためには、準備として年代別SNS利用率を把握し、コンプライアンやセキュリティを理解する必要があります。
SNS販促を成功させるために、自社の強みを分析して、SNS販促の目的を決め、ターゲットを明確にしたうえで、担当者や運用のためのルールを事前にしっかりと決める手順を踏んでいきましょう。
目的に合わせてSNSの特徴を活かした販促をしてみてはいかがでしょうか。
著者プロフィール
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング編集部
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティングは、客観的調査データを活用したCSマネジメント体制を確立。ミステリーショッピングを中心とする「トータル・コンサルティング」で、お客様の店舗に最適なソリューションをご提案します。