離職率を下げるメリットとは?従業員の定着率を高めるためのポイント

コラム

人材不足が叫ばれる中、企業の離職率の高さは一つの課題となっています。厚生労働省が発表した『令和5年雇用動向調査結果の概況』によると、離職率は以下のように推移しています。

 

● 令和4年の離職率…15.0%
● 令和5年の離職率…15.4%
(引用元:令和5年雇用動向調査結果の概況|厚生労働省

 

 

数値の変化は微々たるものながらも、令和4年と比べると増加傾向にあります。

企業としては、人材不足を防ぐためにも、この離職率を下げ、従業員が長期間在籍できる環境を整えていかなくてはなりません。今回は、従業員の定着率を高めるポイントを解説します。離職率が高くなる原因から解説しますので、本記事を参考にしながら、施策を検討しましょう。

 

「離職率」の定義

 

離職率とは、企業から退職する従業員の割合を示した数値です。

ただし、計算方法は様々です。一般的には1年間の退職者数を全従業員数で割ります。厚生労働省の調査の場合は、1月1日時点の常用労働者を基準としています。一方で、一部企業では入社後3年間の離職率を算出しているケースもあります。

このように、一定の定義はあるものの、企業によって離職率の算出方法は若干異なります。

 

離職率の計算方法

離職率は一定期間内の退職者数を全従業員数で割って算出します。企業や目的によって対象期間や従業員範囲が異なっても基本的な計算方法は同じです。

例えば2023年の離職率を求める場合、その年の退職者数を1月1日時点の全従業員数で割ります。200人の企業で年間10人が退職した場合、「10÷200×100=5」で離職率は5%となります。

 

 

離職率を下げるメリットとは?

離職率を下げる大きなメリットは、人材不足を防げる点が挙げられますが、その他にも以下のようなメリットがあります。

 

● ホワイト企業のイメージを与えられる
● 生産性・モチベーションの向上につながる
● 採用・育成コストの削減になる

 

このように離職率を下げることは、社内だけでなく、社外にも影響を及ぼします。。以下で、それぞれのメリットが得られる理由について、具体的に解説します。

 

 

ホワイト企業のイメージを与えられる

離職率の低下は、企業のイメージ向上につながります。定着率の高さは、労働環境の良さや経営の安定性を示す数値となるため、求職者にとって魅力的です。

例えば、離職率の低い企業は「働きやすい」「従業員が生き生きしている」といった好印象を与えやすいです。一方、高い離職率は労働環境や経営状態など、ネガティブなイメージを与えかねません。

結果として、離職率の低下は「ホワイト企業」としてのブランド構築に寄与します。

 

生産性・モチベーションの向上につながる

離職率の低い職場は、人間関係がよく、コミュニケーションがとれていてます。離職が少なければ当然、業務の習熟度もあがり、業務効率は格段に向上します。結果、組織全体の生産性向上につながります。

一方、退職者が多い組織では、残った従業員の不安やモチベーション低下を招きます。
離職率を下げることで従業員に安心感を与え、働きやすい職場として力を発揮してもらえるのです。

 

採用・育成コストの削減になる

離職率の低下は、企業のコスト削減としても効果的です。

人材採用には広告費や人件費、育成には研修費用など多くの投資が必要です。求人掲載費用、人材紹介会社への支払い、採用担当者の給与、さらに新入社員の教育費用を考えると、一人の従業員を戦力化するまでには相当なコストがかかります。

離職率が高いとこれらの投資が無駄になりますが、定着率が向上すればコストが回収され、利益となります。

つまり、離職率を下げることは、人材への投資効果を最大化することともいえるのです。

 

 

従業員の離職率が高くなる原因

従業員の離職率が高くなる原因は、多岐にわたります。一つひとつの不満が膨らんだ結果、離職してしまうのです。

以下では、従業員の離職が高くなる原因を紹介していきますので、自社で当てはまるケースがないかを確認してみましょう。

 

評価・給与への不満

給与への不満と不透明な評価制度は離職率を高める原因となります。

例えば、「同期と比べて年収が低い」「昇給が期待通りでない」など、給与面での不満は転職のきっかけになります。

これらは、単に給与が低いという不満だけでなく、評価基準が曖昧なことも関係しています。その結果、「正当に評価されていない」と不満を感じ、モチベーションを低下させてしまうのです。

 

労働時間が長い・休日が少ない

長時間労働や休暇の取りにくさは、ワークライフバランスがとれないとして、離職率を高める原因になります。

例えば「残業で家族との時間が持てない」「趣味を楽しむ余裕がない」といった状況は、大きなストレスとなり、転職のきっかけになります。同様に、有給休暇が取りにくい環境も問題です。休暇申請が拒否されたり、業務量が多くて申請できなかったりするケースは、従業員の不満を高めます。

ワークライフバランスを重視する傾向が強まる中でのこれらの要因は、人材流出を加速させてしまうのです。

 

仕事へのやりがいを感じられない

仕事へのやりがいは、業務のモチベーション低下を招き、離職へとつながります。実際に、昨今では仕事にやりがいを求める人が増えている傾向があります。株式会社学情が社会人経験3年未満の「第二新卒」の転職理由に関するアンケートを実施したところ、以下のような結果になりました。

 

● 給与・年収をアップさせたい…32.9%
● もっとやりがい・達成感のある仕事がしたい…35.0%
● 残業を減らしたい・休日を確保したい…26.4%
(引用元:第二新卒の転職理由は「もっとやりがい・達成感のある仕事がしたい」が最多 | 株式会社学情のプレスリリース

 

上記のように、ワークライフバランスや給与よりもやりがいを重視している傾向がみられます。「やりたかった仕事ができない」「新しいことに挑戦できない」という不満は、離職につながる可能性が高くなるのです。

 

職場の人間関係による問題

職場の人間関係は、離職率を高める大きな要因です。エン・ジャパンの調査では、会社に伝えていない本当の退職理由のトップとして「人間関係の悪さ」があるとしています。

 

会社に伝えた退職理由、第1位は「別の職種にチャレンジしたい」。会社に伝えなかった本当の退職理由、第1位は「人間関係が悪い」。
引用元:「本当の退職理由」調査(2024) | エン・ジャパン(en Japan)

 

職場の人間関係の悪さを退職理由として伝えなかった理由として、下記があります。

 

● 話しても理解してもらえないと思ったから
● 円満退社したかったから
● 言う必要がないと思ったから
● 引き止められるのが面倒だから

 

上記のように、人間関係が大きな問題でありながらも、それを相談できない職場環境にも問題があるといるでしょう。

 

従業員の定着率を高めるポイント

 

従業員の定着率を高めるためには、いくつもの施策が考えられます。以下では、参考として7つの施策を紹介します。

 

● 労働環境の改善
● 人事評価制度の見直し
● 社内コミュニケーションを活性化させる
● 従業員の成長の機会をサポートする
● 柔軟な働き方を取り入れる
● 採用のミスマッチをなくす
● 明確なビジョンの共有

 

以下で具体的な方法を解説しますので、実際に取り入れられるか検討してみましょう。

 

労働環境の改善

長時間労働や残業時間が多い企業の場合は、労働環境を改善しましょう。ワークライフバランスがとれるようになれば、従業員の不満が減り、離職を抑えられます。

残業時間削減のためには、上限設定や定時退社日の導入が効果的です。しかし、時間を短縮することで仕事が回らなくなるリスクもあります。その場合には、ITによる業務効率化を検討しましょう。書類作成の自動化ツールや勤怠管理システムの導入で作業時間を短縮できます。

また、人材採用を積極的に行い、人手不足を解消することも検討しましょう。人手が増えることで個々の負担が軽減されます。

これらの施策を総合的に実施することで、従業員の満足度が向上し、定着率の改善につながるでしょう。

 

人事評価制度の見直し

人事評価が適正であるか、一度見直してみましょう。評価が「不当」「あいまい」と感じられると、他の待遇が良くても離職の原因となるためです。

具体的な改善策として、360度評価の導入が挙げられます。上司だけでなく、同僚や部下も評価者となる方法で、より客観的で公平な評価が可能になります。業績やスキルだけでなく、チームへの貢献度も多角的に評価できるため、結果として、従業員の納得度が高まり、モチベーション向上につながるでしょう。

 

社内コミュニケーションを活性化させる

社内の人間関係が問題視される場合は、社内コミュニケーションの活性化の施策を検討しましょう。良好な人間関係は、働く楽しさを増し、業務の円滑化と生産性向上にもつながるためです。

具体的な施策として、社内報の発行、社内イベントの開催、リフレッシュスペースの設置、コミュニケーションツールの活用などが挙げられます。社内イベントでは他部署との交流が促進され、社内SNSでは双方向のコミュニケーションが可能になります。

これらの取り組みにより、従業員間の理解が深まり、職場の雰囲気が改善されるでしょう。

 

従業員の成長の機会をサポートする

従業員の働きがいを高めるために、成長機会を増やしましょう。成長の機会がないと、従業員のモチベーションが低下し、キャリアチェンジや他社への転職を考える可能性が高まる可能性があります。

具体的な支援策として、OJTや座学研修の実施、セミナー受講や資格取得の支援が挙げられます。特に効果的なのは、明確なキャリアパスの設定です。目標とする役職までの道筋や必要なスキルを示すことで、従業員は自身の成長プロセスを具体的にイメージしやすくなります。

これにより、従業員の成長意欲が高まり、会社への帰属意識も強まります。

 

柔軟な働き方を取り入れる

従業員の多様なニーズに応える柔軟な働き方を取り入れることも大切です。個々の生活スタイルやライフステージの変化に対応できる環境は、長期的な就業を可能とします。

具体的には、リモートワーク、時短勤務、ハイブリッドワークなどの多様な就業形態を整備します。例えば、育児中の従業員が在宅勤務を選択したり、介護中の従業員が時間単位で有給休暇を取得したりできるようにすると良いでしょう。

このような柔軟性は、従業員に「この会社なら長く働き続けられる」という実感を与えます。

 

採用のミスマッチをなくす

採用時の企業側と求職者側の認識のずれは「採用ミスマッチ」と呼ばれ、早期退職やモチベーション低下につながりやすいと考えられます。

仕事内容や必要なスキル、経験だけでなく、会社の文化やカルチャーなどの価値観の適合性も考慮することで、ミスマッチを防ぐことができるでしょう。

採用段階を見直すことで、入社後のギャップを最小限に抑え、長期的な就業を促進できるでしょう。

 

明確なビジョンの共有

会社のビジョンが定まっているのであれば、従業員へのビジョンの共有も大切です。ビジョンは、会社の目指す目標です。ビジョンを共有することで、従業員は自身の役割や将来のキャリアパスを明確に描けるようになります。

ビジョン共有の方法として、全体会議や社内報の活用、新入社員研修での説明などが効果的です。定期的な社長メッセージで会社の方向性を伝えたり、部門ごとにビジョンに基づいた目標を設定したりすると良いでしょう。

従業員は組織の一員としての自覚を強め、仕事へのモチベーションが向上に繋がるでしょう。

 

まとめ

企業は、人材不足を乗り切るためにも、従業員の離職率を下げ、従業員の定着を進めていかなければなりません。
そのためには、現状の問題点を把握し、それに応じた対策を実施していく必要があります。
本記事でもいくつかの施策を解説しましたが、各企業の問題点によってアプローチの方法は異なります。
まずは自社の現状の課題を見直すところから始めると効果的でしょう。

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著者プロフィール
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング編集部

エイジスリサーチ・アンド・コンサルティングは、客観的調査データを活用したCSマネジメント体制を確立。ミステリーショッピングを中心とする「トータル・コンサルティング」で、お客様の店舗に最適なソリューションをご提案します。