「『濫用等のおそれのある医薬品』に係る規制」その販売実態とドラッグストアですぐにできる対策とは?
目次
令和5年4月1日より、「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則第十五条の二の規定に基づき濫用等のおそれのあるものとして厚生労働大臣が指定する医薬品の一部を改正する件」が適用されました。
今回は、本改正についての注意点や対策方法について解説します。
改正に伴い、指定されている薬を扱うドラッグストアは、改正内容をしっかりと理解して対策を進めていきましょう。
「濫用等のおそれのある医薬品」の改正
令和5年4月1日に改正された「濫用等のおそれのある医薬品」では、以下のような変更がありました。
改正前 | 改正後 |
エフェドリン | エフェドリン |
コデイン(鎮咳去痰薬に限る) | コデイン |
ジヒドロコデイン(鎮咳去痰薬に限る) | ジヒドロコデイン |
ブロモバレリル尿素 | ブロムワレリル尿素 |
プソイドエフェドリン | プソイドエフェドリン |
メチルエフェドリン(鎮咳去痰薬のうち、内容液剤に限る) | メチルエフェドリン |
(引用元:濫用等のおそれのある医薬品の改正について.pdf|厚生労働省)
「濫用等のおそれのある医薬品」の改正の経緯
本改正の経緯は、一般用医薬品の過剰服用や依存性の問題が報告されているからです。
令和元年度には、厚生労働科学特別研究事業による「民間の依存症支援団体利用者を対象とする依存実態の再解析及び追加調査」において、一般用医薬品の濫用による薬物依存が報告されています。
さらに、薬物依存症回復支援施設ダルク利用者を対象にした調査では、一般用医薬品の対象としてジヒドロコデインやメチルエフェドリンを含んだ鎮咳去痰薬のみならず、総合感冒薬でも同様に依存症例が報告されています。
このような状況を踏まえて、濫用等のおそれのある医薬品の範囲を見直す流れとなったのです。
「濫用等のおそれのある医薬品」販売時の注意点
薬局や医薬品販売業者は、濫用等のおそれのある医薬品を販売・授与する際には、以下の確認を行う必要があります。
当該薬局において医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師又は登録販売者に、次に掲げる事項を確認させること。
・当該医薬品を購入し、又は譲り受けようとする者が若年者である場合にあつては、当該者の氏名及び年齢
・当該医薬品を購入し、又は譲り受けようとする者及び当該医薬品を使用しようとする者の他の薬局開設者、店舗販売業者又は配置販売業者からの当該医薬品及び当該医薬品以外の濫用等のおそれのある医薬品の購入又は譲受けの状況
・当該医薬品を購入し、又は譲り受けようとする者が、適正な使用のために必要と認められる数量を超えて当該医薬品を購入し、又は譲り受けようとする場合は、その理由
・その他当該医薬品の適正な使用を目的とする購入又は譲受けであることを確認するために必要な事項
当該薬局において医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師又は登録販売者に、前号の規定により確認した事項を勘案し、適正な使用のために必要と認められる数量に限り、販売し、又は授与させること。
これらの注意点としては、薬局やドラッグストアだけではなく、インターネット販売の際も、上記の確認が必要となります。
ドラッグストアがすぐにできる対策
「濫用等のおそれのある医薬品」の指定範囲の見直しに対して、ドラッグストアができる対策を3つ紹介します。
ドラッグストアは、以下を参考に対策を進めていきましょう。
ただし、あくまで「すぐにできる対策」として紹介しておりますので、以下の内容を実施さえすれば問題ないというわけではありません。
POPの適正化
まずは「濫⽤等のおそれのある医薬品」や「指定第2類医薬品」の売り場におけるPOPを適正化させましょう。(「濫用等のおそれのある医薬品」はほとんどが指定第2類医薬品に分類されているため)
たとえばPOPに以下のような文言を記載します。
- 「この商品の購入は、おひとりさま原則1つまでとなります」
- 「2点以上購入の際は購入理由をお伺いしております」
- 「指定第2類医薬品をご購入のお客様は、使用上の注意を必ずご確認ください」
- 「薬剤師または登録販売者にご相談ください」
お客様への注意喚起
「濫用等のおそれのある医薬品」の販売ルールについては、お客様の理解も必要です。
そのため、店頭ポスターやPOPで、お客様への注意喚起をおこないましょう。
以下は、注意喚起の例文です。
お客様各位
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20歳未満のお客様へ
薬物濫用防止のため、以下の製品を含む医薬品の販売時に特別なルールを設けております。
上記の成分を含む場合には、以下を確認させていただきます。
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(引用元:濫用等のおそれのある医薬品について.pdf|厚生労働省)
従業員への周知
「濫用等のおそれのある医薬品にかかわる規制」は、従業員の理解も求められます。
従業員が理解していないと、必要な確認などを怠って販売してしまう恐れがあるからです。
そのため、ドラッグストアで働くアルバイト・パートを含む全従業員への周知を行いましょう。可能であれば、レジで該当商品のバーコードを読み込んだ際に注意喚起が出るなどの設定ができれば効果的です。
また、従業員の知識や意識の均一化を図るために研修や調査を行うのも効果的です。
「濫用等のおそれのある医薬品」の調査事例
「濫用等のおそれのある医薬品」について正しく管理・販売されているかを確認するためには、覆面調査をおすすめします。
覆面調査をすることで、店舗の実態を把握することができ、濫用対策はもちろん、従業員の対応に対する評価・教育に役立ちます。
以下に実際に調査を行った事例をもとに、具体的な内容を紹介しますので、ぜひドラッグストアなど医薬品を取扱う店舗を運営する企業様におかれましては、是非覆面調査の実施をご検討ください。
調査の目的
あるドラッグストアでは、お客様が「濫⽤のおそれのある医薬品」「第1類医薬品、要指導医薬品」の購入行動をとった際に、従業員が正しい案内ができているかを調査しました。
調査項目は以下のとおりです。
- 医薬品販売チェックシートの活用
- 購入個数制限
調査概要
調査は、ドラッグストア店舗にて調査員が行います。
以下は、具体的な調査内容の例です。
- 指定時間内に入店
- 20~30分程度滞在
- 同日1店舗の調査まで
- 原則として、当社が指定する指定第2類医薬品、かつ濫用等のおそれのある医薬品である「Aカプセル」を購入します。例外的に、品切れ等で購入できない場合は、当社が指定する別の指定第2類医薬品、かつ濫用等のおそれのある医薬品である「Bシロップ」を購入します。
- 購入する際、上記の商品を2点ずつレジに持っていく手順とし、「医薬品販売チェックシートを⽤いて確認されたか?」「原則1個の販売である旨を説明されたか?」を確認します。
評価対象従業員・氏名と資格の読み取り
調査員には、ドラッグストアの誰が対応したかも確認してもらいます。
そのため、氏名と資格の読み取りが必須です。
具体的な確認事項は、以下のとおりです。
- 名札を着用しているか?
- 名札を着用していない場合は特徴や服装を覚えておく
- 名札を着用している場合は読みとれるものになっているか?
- 読み取れる場合は氏名と資格を報告
購入までの流れ
購入までの流れでは、調査員に以下を確認しながら購入してもらいます。
流れ | チェック内容 |
従業員の挨拶 | 入店時または店内での買い物中の、従業員からの挨拶の有無 |
売場掲示・POPの確認 | ・濫⽤のおそれれのある医薬品について、注意喚起のPOPの有無を確認
・指定第2類医薬品について注意喚起のPOPの有無を確認 |
医薬品売場での接客 | ・医薬品売場の棚の前で悩んでいる際の、従業員からの声掛けの有無
・声掛けがあった場合、従業員に「風邪薬と一緒に飲んでもいいですか?」と質問をし、回答内容を具体的に報告 |
濫⽤のおそれのある医薬品購入時
濫⽤のおそれのある医薬品を購入する際には、調査員は該当商品を2個、レジにもっていき、以下の項目を確認します。
- 医薬品販売チェックシートを⽤いて確認されたか?
- 原則1個の販売である旨を説明されたか?
- 他の薬局で同効薬を購入していないか確認されたか?
- 応対をした従業員の氏名・資格を読み取る
最終的に1点を購入した後に、以下のような通常のレジ対応の調査を行うことも可能です。
- レジでの購入時にレジ袋が必要か確認されたか?
- レジでの購入時に、ポイントカードの所持確認の有無や、ポイントカードを持っていないと回答した際に作成の案内があったか?
「第1類医薬品・要指導医薬品」(薬剤師在籍)の調査項目
「第1類医薬品・要指導医薬品」の取扱いがある店舗で、ある場合は、調査員が該当するC錠をレジに持っていくという調査も可能です。
その際に確認する項目の例として、以下の3項目のようなものがあります。
- 薬剤師から、医薬品販売チェックシートを⽤いて確認されたか?
- 医薬品販売チェックシートで確認後、C錠について文書による説明はあったか?
- 誰が使うか、使⽤者の確認はあったか?
「第1類医薬品・要指導医薬品」(薬剤師不在時)の調査項目
「第1類医薬品・要指導医薬品」で薬剤師が不在の場合も、上記同様にC錠を購入しようとし、どのような対応があるかを調査することができます。
その際に、確認すべき項目は以下の2つです。
- 今購入できない理由の説明はあったか?
- いつ来店すれば購入できるか、近くの○○店なら購入できる等、代替の提案があったか?
まとめ
「濫用等のおそれのある医薬品」の指定範囲の変更により、今後ドラッグストアでの医薬品販売においては、従業員に、より適切な行動をすることが求められます。
「濫用等のおそれのある医薬品」を購入するお客様に対する対応について、必ず従業員に周知をし、濫用の増加を食い止めるために徹底した取り組みを行いましょう。
その際には是非、今回紹介したような覆面調査の実施も検討してみてください。
著者プロフィール
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング編集部
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティングは、客観的調査データを活用したCSマネジメント体制を確立。ミステリーショッピングを中心とする「トータル・コンサルティング」で、お客様の店舗に最適なソリューションをご提案します。