離職率が高い理由は?原因の調査方法と離職の対策を解説
目次
企業や店舗などの経営には、いかに離職率を低下させて人材を確保するかが重要です。
経営者や人事担当者にとって、離職率が高い理由や原因を知ることが、対策を考える際の第一歩となるでしょう。
そこで今回は、厚生労働省のデータをもとに、離職の理由を推測し、その原因の調査方法である「覆面調査」「ES調査」について解説します。
この記事を読むことで、離職率を低下させたいと悩んでいる経営者や人事担当者は、対策を考えるヒントを得られるはずです。
離職率が高い主な理由
厚生労働省の令和3年上半期雇用動向調査結果の概要には、転職入職者が前職を辞めた理由が男女別にまとめられています。
この理由を分析すると、離職率が高い主な理由が推測できるでしょう。
転職入職者が前職を辞めた理由(個人的理由)の上位は以下になります。
男性
1位:給料等収入が少なかった(7.4%)
2位:職場の人間関係が好ましくなかった(7.1%)
3位:労働時間、休日等の労働条件が悪かった(6.6%)
女性
1位:労働時間、休日等の労働条件が悪かった(10.3%)
2位:職場の人間関係が好ましくなかった(8.9%)
3位:給料等収入が少なかった(6.6%)
※その他の個人的理由を除く
引用元:令和3年上半期雇用動向調査結果の概要 転職入職者が前職を辞めた理由
離職の理由の上位は、給料、職場の人間関係、労働条件
厚生労働省の令和3年上半期雇用動向調査結果の概要によると、 前職を辞めた理由の上位は、給料、職場の人間関係、労働条件となっています。
給料等が低い
給料等が低い点は、離職が多い職場の特徴です。
従業員は、今の職場よりも高い給料の職場を求めて転職するのではないでしょうか。
職場の人間関係が良くない
職場の人間関係が良くない場合も離職につながります。
たとえば、職場のパワーハラスメントやそれに近い人間関係があった場合、従業員は精神的・身体的に苦痛を感じ離職につながる可能性が高まるでしょう。
労働時間、休日等の労働条件が悪い
労働時間、休日等の労働条件が悪い職場は離職率が高くなります。
たとえば、休憩や休日の決まりがあいまいで、有給休暇も取りにくい職場などがあげられます。
労働時間の決まりは、労働基準法でも決められており、1日の労働時間を8時間以内、1週間の労働時間を40時間以内と定めています。
たとえば、時間外労働が多く従業員の働き方に合わない場合や、多様な働き方に対応できる制度が充実していない職場などがあげられます。
経営者や人事担当者が掴みにくい離職理由
従業員が離職する理由の上位のうち、経営者や人事担当者が掴みにくい離職理由は、職場の人間関係でしょう。
広い意味で考えると、職場環境ともいえます。
給料や労働条件は、業界や同業他社、一般的な企業の水準は、比較的掴むことができます。
経営者や人事担当者は、それらの水準と自社や店舗を比較して、離職防止に向けた具体策を検討していく事ができるわけです。
一方、小売店や飲食店の店舗や病院内などのいわゆる現場の人間関係や職場環境については、経営者や人事担当者は、実態を把握することが困難であり、従業員が抱える悩みや問題点を見つけることができないことが想定されます。
その結果、人間関係や職場環境を理由に従業員が辞めてしまうわけです。
また、現場の人間関係や職場環境についての実態が把握できないため、経営者や人事担当者は、離職防止に向けてどのような対策を立てるべきかを判断することが難しくなります。
後半の章では、現場の人間関係や職場環境についての実態把握に役立つ「ES調査」と「覆面調査」について解説します。
離職率が高いことのデメリット
離職率が高いことの最大のデメリットは、従業員が退職することで事業を遂行していくための人材確保が困難になることです。
その他にも付随して多くのデメリットが生じていきます。
この章では、代表的な4つのデメリットについて解説します。
採用コストがかかる
企業や店舗は、従業員を採用するために、多くのコストをかけています。
採用できても、離職する従業員が多ければ、採用にかけたコストが無駄になることになります。
さらに、離職によって不足した人材を補うために、採用をするため、更に採用コストがかかります。
教育コストが無駄になる
店舗や企業は、従業員を育成するために、多くの教育コストをかけます。
コストをかけて教育しても、従業員が辞めてしまえば教育コストが無駄になります。
新しい人材の採用が難しい
求職者は企業を選ぶ際に、離職率を気にします。
離職率が高い企業は、給料、職場の人間関係、労働条件など、なにかしらの問題点があると判断されがちです。
近年は、インターネット上に企業情報や口コミが数多く発信されています。
求職者は必ずといっていいほど情報に目を通しますので、離職率が高い企業や店舗は敬遠され、新しい人材の採用が難しくなります。
従業員のモチベーション低下
店舗や企業内で退職する従業員が増えると、従業員は現在の職場で働くことに不安を感じてきます。
給料、職場の人間関係、労働条件などの理由で従業員が離職していく中で、従業員のモチベーションは低下し、新たな離職を生み出す可能性が高まります。
離職の原因を調査する方法
離職の原因として従業員の考えや職場の実態を調査する方法として、従来は、アンケートや本社スタッフによる覆面調査などが実施されてきました。
しかし、自社が行うアンケートで建前の意見が集まると、従業員の本音や本当の職場の実態が把握できないことが考えられます。
それらをスタッフにフィードバックすればするほどかえってモチベーションが下がってしまう結果になる可能性があります。
また、本社スタッフによる覆面調査は、既に顔バレしているため、良い結果しか出ず、本当の職場の実態ではないことがあります。
このような従来の調査方法の問題点を解決する解決策として導入が進んでいるのが、プロフェッショナルな調査会社を活用した「ES調査」や「覆面調査」です。
離職の対策① ES調査
離職の対策として従業員の実態を調査する方法のひとつにES調査があります。
ES調査とは
ESとは英語のEmployee Satisfactionの頭文字をとった言葉で、日本語で従業員満足度と呼ばれています。
ES調査とは、従業員満足度調査のことで、従業員が企業や店舗に対してどのくらい満足しているかを調査することができます。
調査結果は、定量的な数値で表されるため、客観的な現状の把握とともに継続して実施することで、改善度合いを知ることができます。
ES調査の活用方法
離職の対策を考える際には、客観的で定量的なデータでの現状把握が必要です。
ES調査は離職の対策として必要な従業員視点でのデータを把握するために活用できます。
また、経営者や人事担当者が離職率低下のための取り組みを実施した後の効果を測定するためにES調査は活用できるでしょう。
ESが向上していることは、従業員が企業に対して満足している度合いが高まっていることを表すため、離職率が低下することが期待できます。
離職の対策② 覆面調査
離職の対策として店舗や企業、職場や上司、従業員などの実態を調査する方法のひとつに覆面調査があります。
覆面調査とは
覆面調査は、ミステリーショッピングやミステリーショッパーとも呼ばれ、匿名の経験豊富な専門調査員が、客として実際に買い物をしながら行う調査です。
覆面調査(ミステリーショッピング)専門サービス企業では、厳しい審査に合格した専門調査員が、評価基準を明確にした客観的で精度の高い調査を行います。
覆面調査(ミステリーショッピング)によって、従業員の接客サービスや店舗のコンディションを客観的に調査することができるため、自店の強み・弱みを発見し、目指す姿と現状のギャップを把握することができます。
覆面調査の活用方法
店舗で働く従業員は、来店した顧客に対してより良いサービスを提供するために日々努力しています。
しかし、それらのサービスについての顧客の生の声についてはほとんど知る機会がないという悩みがあります。
たとえば、アパレルの店舗では「提案したコーディネートが気に入ってもらえただろうか」、保険代理店などの店舗では「商品の説明は理解してもらえただろうか」、レストランなどの飲食店では「料理提供のタイミングは丁度よかっただろうか」といった点が気になるところです。
覆面調査によって従業員は、顧客の生の声を知り、顧客目線の客観的な評価を得ることができます。
店舗や従業員の実態を経営側が知ることで、従業員が抱える悩みや問題点を知るきっかけとなり、従業員のモチベーションを上げるための対策の実施にもつながります。
この会社や店舗で働きたいという意識が高まることで、離職率低下が期待できます。
覆面調査で顧客目線の客観的な評価を得る
覆面調査をすることで、接客の基準を物差しに〇×で評価をすることができるようになります。
公平な第三者の目で良し悪しをジャッジしてもらえるので従業員は結果を素直に受け入れやすく、モチベーションを下げることなく改善に向けて動いていくことができるようになります。
覆面調査では、良い点も正しく評価される
覆面調査で、接客レベルの高い従業員を見つけ出し、良い評価を与えることができます。
「褒められること」は従業員の仕事に対する意識変革を生み、仕事の楽しさを感じ始めます。この店で働きたい、この店を自分たちのチカラでもっと良くしたいと考えるでしょう。
第三者による客観的な調査は、さまざまな効果と変化をもたらし、離職率を低下させるわけです。
覆面調査が離職防止に有効な業種は?
覆面調査は、小売業、飲食業をはじめ、さまざまなサービス業、金融業などで活用されています。
具体的な業界・業種は以下になります。
小売業
・総合スーパー
・スーパーマーケット
・ドラッグストア
・ホームセンター
・ショッピングセンター
・ディスカウントストア
・コンビニエンスストア
・アパレル
・百貨店
・Books/CD
・雑貨
・高級ブランド品
・ホームファッション/家具
・家電
・眼鏡
・化粧品
・ペット
・お惣菜
・スイーツ
飲食
・ファストフード
・カフェ
・レストラン(和食・中華・イタリアンなど)
・焼肉
・寿司
・居酒屋
・ラーメン
サービス業
・カーディーラー
・ガソリンスタンド
・携帯電話
・レジャー(遊園地・水族館・フィットネス・スポーツ・パチンコなど)
・ホテル、旅館
・ブライダル
・美容院、エステ
・学習塾
・介護サービス
医療
・病院
離職を防止して企業を成長させる「サービス・プロフィットチェーン」
サービス・プロフィットチェーンとは、従業員満足度(ES)を重視することで顧客満足度(CS)が高まり、企業の収益が高まるというフレームワークです。
小売業、飲食業をはじめ、さまざまなサービス業、金融業など、接客による業態で有効といわれています。
従業員満足度(ES)が高まることで、離職防止ができることが期待できますので、離職率を低下させて企業を成長させる対策として有効でしょう。
たとえば、サービス・プロフィットチェーンを活用して、以下の4つの変化を循環させることで、従業員満足度(ES)、顧客満足度(CS)、企業収益の向上が期待できます。
• ES調査や覆面調査などで現状を把握し、従業員満足度(ES)を重視した取り組みをすることで、従業員の生産性や仕事に対しての自律的な貢献が高まる。
• 従業員の働き方が変わることで、顧客に対するサービスの品質が高くなり、顧客満足度(CS)が向上する。
• 顧客満足度(CS)の向上が顧客ロイヤルティを高め、収益につながり企業を成長させる。
• 企業の成長によって、企業はさらに従業員満足度(ES)を重視した取り組みを実行していく。
まとめ
離職の主な理由は、給料、職場の人間関係、労働条件です。
なかでも、経営者や人事担当者が掴みにくい離職理由は、職場の人間関係・職場環境でしょう。
その原因の調査方法として、「ES調査」と「覆面調査」があります。
離職の対策を考える際には、客観的で定量的なデータでの現状把握が必要です。
ES調査は離職の対策として必要な従業員視点でのデータを把握するために活用できます。
第三者による客観的な覆面調査は、顧客目線の客観的な評価を得ることができ、従業員の良い点を正しく評価することができるなど、さまざまな効果と変化をもたらし、離職率低下が期待できます。
また、離職を防止して企業を成長させる、サービス・プロフィットチェーンを回していくためにもES調査と覆面調査は有効です。
経営者や人事担当者は、離職率低下に向けての取り組みとして、「ES調査」や「覆面調査」の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
※覆面調査にパワハラ対策の直接的な効果はありません。ESとCSの関係に言及するならば「サービス・プロフィットチェーン」について、言及頂くと良いです。
著者プロフィール
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング編集部
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティングは、客観的調査データを活用したCSマネジメント体制を確立。ミステリーショッピングを中心とする「トータル・コンサルティング」で、お客様の店舗に最適なソリューションをご提案します。