人手不足時代の複合商業施設(ショッピングセンター)の解決方法とは ?
目次
少子高齢化がすすむ日本経済にとって大きな課題のひとつに、人手不足があります。
限られた人材を確保するためには、離職率を抑える必要もあります。
ショッピングセンターにおいても、人手不足対策のための施策を検討していく必要があるでしょう。
また、お客様相手のショッピングセンターにおける施策を検討するためには、まずお客様目線で現状を把握することが大切です。
人手不足の解決方法としてなんらかの施策を行ったあとでも、状況を確認して継続的に改善していく必要があります。
ショッピングセンターに訪れたお客様の目線で客観的に現状をチェックできる方法として覆面調査が注目されています。
今回は、人手不足を引き起こす要因と解決方法を解説しながら、お客様目線での継続的な現状チェックのための覆面調査について紹介します。
人手不足時代を引き起こす要因
人手不足時代を引き起こす要因はおもに以下の2つが考えられます。
- 生産年齢人口の減少
- 高い離職率
生産年齢人口の減少
労働に従事できる年齢を日本では15歳から64歳としており、この年齢層の人口を生産年齢人口といいます。
内閣府の「令和5年版高齢社会白書」(図1-1-2)によると、生産年齢人口は、平成7年の8,716万人が最も多く、以降は減少が続き、令和4年には7,421万人となり、総人口の59.4%になっています。
出典: 令和5年版高齢社会白書(全体版)
また、出生数が減少しているため将来的に生産年齢となる0歳から14歳の年少人口が減少傾向にあります。令和6年の上半期も過去最少のペースで減少しており、年間の出生数は70万人を割り込む可能性もあるとニュースになりました。令和35年には1,000万人を割り、令和52年には797万人と、令和4年の約55%になるだろうと推計されています。
出生数の減少は、生産年齢人口に影響を及ぼし、令和14年に6,971万人と7,000万人を割り、令和52年には4,535万人となると推計されています。
高い離職率
離職率の高さも人手不足を引き起こす要因となります。
厚生労働省の令和4年雇用動向調査結果の概況(図3-1 産業別入職率・離職率)によると、「卸売業、小売業」は、入職率が13.6%、離職率が14.6%となり、入職率より離職率が高くなっています。
人手不足対策には、離職率を抑えて人材を確保することが重要です。
出典: 令和4年雇用動向調査結果の概況
厚生労働省の令和4年雇用動向調査結果の概況には、転職入職者が前職を辞めた理由が男女別にまとめられています。
この理由を分析すると、離職率が高くなってしまう理由が推測できるでしょう。
「その他の個人的理由」を除いた転職入職者が前職を辞めた理由(個人的理由)の上位は以下になります。
男性
1位:労働時間、休日等の労働条件が悪かった(9.1%)
2位:職場の人間関係が好ましくなかった(8.3%)
3位:給料等収入が少なかった(7.6%)
女性
1位:労働時間、休日等の労働条件が悪かった(10.4%)
2位:職場の人間関係が好ましくなかった(10.4%)
3位:給料等収入が少なかった(6.8%)
男女問わず、 前職を辞めた理由の上位は、労働条件、職場の人間関係、給料の順となっています。
労働時間、休日等の労働条件が悪い
労働時間、休日等の労働条件が悪い職場は、男女問わず前職を辞めた理由の1位となっており、離職率が高くなります。
労働時間の決まりは、労働基準法でも決められており、1日の労働時間を8時間以内、1週間の労働時間を40時間以内と定めてられています。社内ルールとしての休憩や休日の決まりがあいまいで、時間外労働が多く従業員の働きに合わない場合や、有給休暇が取りにくかったり、従業員それぞれの多様な働き方に対応できる制度が充実していない職場は、労働条件が悪いと感じられることがあるでしょう。
また、主婦層や学生、シニア層など様々な層からの雇用を確保するためには、時短勤務やフレックス制など柔軟な労働条件や働き方を導入することが必要です。
給料等が低い
給料等が低い点は、離職が多い職場の特徴です。
従業員は、今の職場よりも高い給料の職場を求めて転職するのではないでしょうか。
職場の人間関係が良くない
職場の人間関係が良くない場合も離職につながります。
たとえば、職場のパワーハラスメントやそれに近い人間関係があった場合、従業員は精神的・身体的に苦痛を感じ離職につながる可能性が高まるでしょう。
ショッピングセンターにおける人手不足解決方法
人手不足時代のショッピングセンターにおける解決方法は、大きく分けると2つの側面があるでしょう。
1つは自動化やテクノロジーの活用です。
2022年には全国で36店舗のショッピングセンターがオープンしていますが、オープンしたショッピングセンターを店舗面積別にみると、5,000㎡未満の小型ショッピングセンターは3店舗のみで、大型ショッピングセンターのオープンが多くなっており、店舗面積30,000㎡以上の店舗が5店舗オープンしています。
大型のショッピングセンターの運営には自動化やテクノロジーの活用が不可欠です。
また、最先端の技術を導入することで、訪問した顧客に新しさを感じさせることができるでしょう。
2つめは、従業員が働きやすいショッピングセンターとしていく点です。
この側面には、トレーニングや柔軟な労働条件の提供、顧客参加型のサービスなどがあげられます。
これらの2つの側面は、相互に関連しており、自動化やテクノロジーの活用をすすめることで、従業員が働きやすいショッピングセンターにつながります。
また、それぞれの解決方法を組み合わせることでさらに効果が上がるでしょう。
ロボットや自動化システムの導入
近年ロボットや自動化システムの性能が飛躍的にあがり、従業員の労働力不足をサポートできるところまできています。
たとえば、自動清掃ロボットや在庫管理システム、受付ロボットなどがすでに多くの施設で導入されています。
ロボットや自動化システムの導入によって従業員の労働が軽減し、本来やるべき業務に時間がさけるようになり生産性が向上します。
働きやすいショッピングセンターとなることにもつながっていきます。
モバイルアプリやタッチスクリーン端末の活用
モバイルアプリやタッチスクリーン端末を配備して顧客に操作してもらうことで、従業員の労働場面を減らし人手不足を解消することができます。
たとえば、テナントの商品紹介の動画を流すことや画面上で顧客と対応するオンライン接客によって、従業員の数を減らしたショッピングセンターがあります。
トレーニングによるマルチスキル化
トレーニングによって従業員をマルチスキル化することで、人材不足を解決することができます。
マルチスキルを持った従業員が増えることで、人材不足や業務の増減に柔軟に対応することができます。
トレーニングプログラムを充実させ、継続的に人材育成をしていくことが重要です。
柔軟な労働条件の提供
従業員の多様なライフスタイルに対応できる柔軟な労働条件や働き方を導入することで、主婦層や学生、シニア層など様々な層からの雇用を促進できます。
社員の労働時間制度の見直し、パートタイムやシフトワーク、短時間のアルバイトなどの導入によって、人手不足を補うことができる可能性があります。
協力関係の強化
地域企業や地域社会との協力関係を強化することで、人材の共有やリソースの共同利用を進め、人手を確保することができます。
また、地域の雇用センターと提携することで、求人情報を共有し、労働力の流動性を高めるのもひとつの方法です。
セルフレジなどの顧客参加型サービスの導入
セルフレジなど、顧客参加型サービスを導入することで、従業員の労働を減らし、人手不足を補うことができます。
リアルタイムデータ分析
リアルタイムのデータ分析を活用することで需要予測を行い、ピーク時や需要の変動に適応した人員配備を計画します。
たとえば、ショッピングセンター内に複数のカメラを設置して、画像解析とモニタリングをするサービスが提案されています 。
継続的な改善プロセス
定期的な業務プロセスの改善を進め、無駄な作業を排除することで、従業員の労働負担を軽減し、生産性向上を図ります。
これらの手段を組み合わせ、継続的なイノベーションと改善を進めることで、人手不足時代における複合商業施設の持続可能な運営が可能となります。
覆面調査は顧客目線で客観的に現状をチェックできる
人手不足対策のために施策を考えるうえで、まずは現状を把握することが大切です。
また、なんらかの施策を行ったあとでも状況を確認して継続的に改善していく必要があります。
お客様相手のショッピングセンターにおける施策を検討するうえで、お客様目線は非常に重要です。
ショッピングセンターに訪れるお客様目線で客観的に現状をチェックできる方法として覆面調査があります。
覆面調査は、ミステリーショッピングやミステリーショッパーとも呼ばれ、匿名の経験豊富な専門調査員が、買い物客となり、実際に買い物をしながら行う調査です。
覆面調査専門サービス企業では、厳しい審査に合格した専門調査員が、評価基準を明確にした客観的で精度の高い調査を行います。
覆面調査によって、従業員の接客サービスや店舗のコンディションを客観的に調査することができるため、ショッピングセンターの強み・弱みを発見し、目指す姿と現状のギャップを把握することができます。
覆面調査専門サービス企業では、調査結果を数値化・可視化し、比較・分析可能な報告書として提出します。
また、数値では表すことができない買い物客の本音の部分も、調査員のコメントを見ることで知ることが可能です。
さらに、調査結果の分析、問題点の抽出、改善提案や、覆面調査専門サービス企業が豊富な調査実績で培った知見を活かし、具体的な提言・アドバイス受けることもできます。
覆面調査をプロフェッショナルな専門サービス企業を活用して的確に実施し、調査結果を効果的に活用することで、依頼主である企業や店舗は、着実に人手不足対策の効果を測定することができます。
まとめ
少子高齢化がすすむなか、ショッピングセンターにおいても人手不足対策のための施策を検討していく必要があります。
人手不足対策の解決方法には、自動化やテクノロジーの活用と従業員が働きやすいショッピングセンターを目指す点があげられます。解決方法は、組み合わせることでさらに効果が上がるでしょう。
また、人手不足対策のためには現状を把握しながら継続的に改善していく必要があります。ショッピングセンターに訪れる顧客目線で客観的に現状をチェックできる覆面調査を検討するのもひとつの方法です。
著者プロフィール
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング編集部
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティングは、客観的調査データを活用したCSマネジメント体制を確立。ミステリーショッピングを中心とする「トータル・コンサルティング」で、お客様の店舗に最適なソリューションをご提案します。